KU MA MO TO NO KO TO

ということで、先週の土曜と日曜は熊本に行ってきました。熊本にはこれで都合何度目の旅行になるのかな。はっきりと憶えてないけれど、もうそろそろ両手の指がいっぱいになる頃だと思います。

羽田からのフライトが、自宅のある湘南〜江ノ島、たくさんの友人が暮らす東海地方の太平洋沿岸や福山&尾道上空を飛び、そしてぼくの故郷松山を見下ろしながら、やがて佐田岬から九州へ……と、なんだか自分の人生に縁の深いエリアを順繰りに遊覧していく、走馬灯のような飛行ルートだったので、ひょっとしてぼくはこのまま身罷ってしまうのかな? と不安になったけど、もちろんなんの問題もなく熊本空港に到着(写真は空港周辺の美しい田園風景)。

空港まで迎えに来てくれたのは井手くん(PEANUTS RECORDS)の親友で、前回の熊本や昨年のGNJの時に運転手として活躍してくれた平本くん(通称、テツ)。

まず直行したのはかれこれ十年以上、その魅力に取り憑かれている大大大好きなうどん屋さん「みのや」(拙著『ディスカバリー・ジャパン』でも紹介)。

同じくみのやフリークである熊本の友人・矢野さんと合流し、なんと初「みのや」のテツくんと三人で。ぼくは豆天うどんにトッピングで丸天。そして、かしわごはん。

見よ、この真剣な表情を。ある意味、今回の初仕事です。

讃岐ばやりの昨今だから、みのやのうどんのやわらかさには誰しも驚嘆するはず。でも、昆布と鰹のふくふくとした旨味あふれる、みのやの出汁のおいしさを味わい尽くすためには、そのすべてを受け止めるような、包容力のある、母性的な、やわらかな麺こそベストマッチなのだ。

かたやコシの強い讃岐うどんは、いりこのキリっとシャープな出汁と組み合わせてこそ、あの男性的な強い麺が活きるわけでしょう。

稲庭のような細い麺からほうとうのような極太まで、麺と出汁、トッピング、熱さや冷たさ……無限のヴァリエーションが楽しめるのはうどんの醍醐味です。中でもみのやのうどんはソフトコアの究極、と思います。

あと特筆すべきはみのやの天ぷらですね。キメの細かい衣が出汁でホロホロほどけ、やがて時間の経過と共にスープ全体を覆いつくすのです。これがまた得も言われぬアクセントに。ああ、ニクたらしい! こうやって書いてるだけで食べたくなってきた!



(Photo by Makoto Ueda)

と、うどんの話はこれくらいにするとして、われわれがみのやで気勢を上げている頃、昼の部の会場である長崎書店さんでは粛々と準備が進められていたのでした。

今回のイヴェントはぼくの発案で、レコード・バイヤーズ・グラフィティの世界観を、熊本の仲間たちと再構築するような試みをしました。まず、PEANUTS RECORDSの常連さん、ジュニアくんとハジメくんによる<ピーナッツで買ったレコード縛り>のDJ。

そして井手くんが学生時代からお世話になっている、熊本の老舗レコード店「IN A DAY」店長の稲田さん(初対面!)も交えた<生レコード・バイヤーズ・グラフィティ>的トークショウ、また熊本で活躍しているバンド「ソング・サイクル」のフロントマン、田尻精さんには<PEANUTS RECORDS DIARY>の中に登場するレコードの中から楽曲をセレクトしてもらい、弾き語りのライヴを行ってもらいました。

全国発売に先駆けて……というヒキはありつつ、発売日前の書籍にちなんだイヴェントでしたし(なおかつ入場料もいただくという)主催してくださった長崎書店の長崎健一さん(現在発売中のブルータス書店特集にも載ってます)や井手くんの気苦労もひとしおだったと思います。

それでもなお「すべてのダンドリはぼくの頭の中!」という姿勢を当日まで貫いたことで、稲田さんさえ前日まったく眠れなかったとおっしゃっていましたから……申し訳ナシ。その甲斐もあって、イヴェントは異様な盛り上がり(c.デッツ松田)を見せたので、結果オーライ。特に稲田さんにはレコ屋生活18年の四方山話(客を通算11人出入り禁止にした話、など)を思う存分お話いただき、MVP級の大活躍をしていただきました。あまりに面白かったので、さらなるオマケ「レコード・バイヤーズ・グラフィティ・イン・ア・デイ」を作りたいくらいですよ。いや、マジで。

もちろん田尻さんのライヴも素晴らしかったな。ぼくも聞かされていなかったカヴァー曲はジューン・ブライズ「EVERY CONVERSATION」(本誌P229)、ダイナソーJr.「WAGON」(同P248)、小沢健二「恋しくて」(同P230)でした。

終了後にはできたてホヤホヤの本へサイン。30冊用意していただいた書籍がその場で28冊も売れ、長崎店長は嬉しい悲鳴(もちろんぼくも)。皆さん、ほんとうにどうもありがとうございました。あ、そうそう「明日買います!」とのことでポストカードにサインした数名の皆さんもちゃんと買ってくださいましたか?(笑)

イヴェントの興奮も覚めやらぬうちに、熊本放送(RKK)へ移動し、地元の人気ラジオ番組「デスマス」の収録。パーソナリティのまさやんが井手くんの古い友人ということもあり、和やかに。この番組はなんと日曜の昼12時から5時までの五時間ぶっとおしの生放送だとか。本来なら翌日に生出演するのがスジなのですが、昼夜のイヴェントをこなし、そのうえ翌日に……となると、体力&気力的に不安があり、わがままを言って、前日のスタジオ収録と相成りました。

こちらも打ち合わせ無しで、ざっくばらんに二、三十分しゃべらせてもらったところ、翌日、移動中にたまたまオンエアを聴いたら、全編ほぼノンエディットで流れてたのはビックリ! ある意味、サンソンよりコアなレコード話を、気持ちよく晴れた日曜の午後に聞かされた熊本の皆さんはどう思われたでしょうかねえ……。

昼のトークショウのメンバー、関係者の方々、夜のアフターパーティの出演者、まさやんも参加しての飲み会@はぐれ雲。馬刺しはもちろん、たてがみ、馬レバー、ごまさば、地野菜のサラダ、天草の魚介類(特にタコ!)や地鶏(天草大王)など、さすがは緑提灯四つ星店。どこからどこまで地場産。そして球磨焼酎! 米焼酎のサッパリした後口は水割りにぴったり。トークショウの成功もあって、ほんとうに美味しいお酒でした。

飲み会後には間髪入れずにアフターパーティ@Ura-tabouがスタート。こちらも昼に負けず劣らぬ大盛況。飲んで、騒いで、踊って、0時から2時まで二時間たっぷり回したところで体力も完全に切れ、3時過ぎにホテルへ帰還……。昼夜両方に来てくださったお客さんもたくさんいらっしゃったので、ゆっくりお話ししたり交流したかったんですが、サクッと帰っちゃって申し訳なかったです。

毎度のことながら、浮かれすぎて写真撮り忘れてたので共演DJの上尾くんのブログから転載。なんか笑われながら写真撮られてるね、ぼく……。


明けて日曜日はただ遊んでたので駆け足で……。

まず、運転手のテツくんの実家近くにある、テツくんがかれこれ三十年ちかく通っているという「王(わん)ちゃんラーメン」へ。店構え同様に、ラーメンの見た目もパンチありますけど、前回食べた玉名のラーメン(強烈な獣臭!)とも違う、ちょっと博多寄りのあっさりしたスープ。でも味に驚くほど奥行きがあって非常に美味しかったな。同じ通りに有名な「大黒屋」もありますが、ぼくは「王ちゃん」のほうが断然好み。と、いうか、今まで食べた熊本ラーメンの中で一、二を争うくらい好き。ちなみにひとりで切り盛りしてくれているイイ顔のおじさんは、出前が入ると客を店内に残して配達に行っちゃうらしいですよ。


ラーメン同様に候補がいくつもあった温泉。そのなかでぼくらが今回選んだのは山鹿市鹿本町にある「水辺プラザ(http://www.mizube-plaza.co.jp/)」。温泉だけでなく、宿泊施設、道の駅的なショップ、レストランもあるので、家族連れが日曜の午後をエンジョイすべく、わんさかと来ていましたが、敷地内を小川が流れ、河原には昼寝にもってこいの大きな木が何本も植わっています。われわれもさっそく一本確保。印象派の絵のような美しい光景。夏には蛍もやって来るという清らかな水が心地よい音を立てて流れていきます。大きな影が横切ったかと思うと、ぼくらの目の前にカササギが飛来。それを死んだ魚のような目で見つめるアダルトチルドレン三人。

ラーメンで膨らんだ胃も落ち着いてきた頃、温泉へゴー。ここはもともと四〇度前後のお湯が出ているらしく、加水はいっさい無し。マイルドな泉質がイヴェント明けのカラダにやさし。男湯の坊主率の高さに若干おののきつつ(井手くん含む)非常に癒されました。

温泉のあとは軽く腹ごしらえのつもりで回転寿司屋へ立ち寄り、ビールに手を出すミズモト&井手。食後はイオンに立ち寄って五木食品のラーメンをお土産に買い込み、空港の喫茶店でダラダラとおしゃべり。そして半べそかきながら機上の人となりました。

ということで、ひさびさの熊本。

昼夜のイヴェントはどちらも手応えがあって、現在の熊本の勢いを感じました。また熊本の人たちが昨今の鹿児島の動きにものすごく注目していたことがわかり、ぼくとしてはその橋渡しのような仕事ができたら面白いな、と思ったりして。新幹線も開通したことだし、どちらの街もますます盛り上がればいいなあ〜。