●サウスダコタの郊外

 ウッドマンの”治療”で見事に蘇った黒クーパー。わりと元気そうな足取りで田舎道を歩いている。
 身体中に血を塗りたくられたせいで、見た目はとんでもないことになってるけれど。

 手下のシャンタルと夫のハッチが、待ち合わせ場所(=農場……こないだ言ってたFARM?)で、黒クーパーの到着を待っていた。
 シャンタルは第2話に出てきたジェニファー・ジェイソン・リー。ハッチはなんとティム・ロス!
 クエンティン・タランティーノの作品に初参加した『ヘイトフル・エイト』で、いきなりオスカー助演女優賞にノミネートされたジェニファーと、『レザボア・ドッグス』以来、タランティーノの作品に数多く出演しているティムが夫婦役なんてたまらない。

 新シリーズからのニューカマーに、タランティーノの影が色濃いのは、単なる偶然だろうか。
 トルーマン兄役のロバート・フォスターも『ジャッキー・ブラウン』で息を吹き返した往年の名優。ジム・ベルーシは役者として、タランティーノと『ジョニー・デスティニー』という作品で共演している。

 滝本誠さんは著書『コーヒーブレイク、デイヴィッド・リンチはいかが』のなかで(ソースは不記載ながら)「リンチはタランティーノ嫌い」と指摘。いっぽうタランティーノは『ブルー・ベルベット』の、ディーン・ストックウェルが口パクで歌うシーンが大好きみたいなので、リンチに対する悪感情は無さそう。

 シャンタルが傷の手当、ハッチは黒クーパーにリクエストされた車、武器、足のつかない新しい携帯を準備。
 さっそくハッチが用意したピンク色のかわいいガラケーで、ショートメッセージをどこかへ送る黒クーパー。
 メッセージの内容は<around the dinner table the conversation is lively,(食卓を囲んでの会話は賑やか)>。
 宛先は”Unknown”。

 そのあと、ラスベガスのダンカン・トッドに電話。
 ターゲット(=ダギー)をまだ仕留めてないことを確認すると「次、電話をかけるまでに殺しておけ」と最後通牒。さもなくば……ってことだろうな。小人の殺し屋が仕損じたあと、ダンカンに打つ手はあるのだろうか。動揺した表情で、ふたたびロジャー(第2話に出てきた手下)を内線で呼び出す。

 ハッチは大量の弾薬や銃を調達し、黒クーパーに手渡す。
 黒クーパーはハッチに 「連邦刑務所の所長を2日以内に殺せ。それが片付いたらラスベガスに向かい、もう1人殺れ」と命令する。ラスベガスのターゲットはもちろんダギーだろう。
 出発しようとする黒クーパーにシャンタルが濃厚なキス。ハッチはそれを見て、ニヤニヤしている。歪んだ夫婦……。
 

●FBIの小型ジェット機の機内

 黒クーパーとの対面を終え、フィラデルフィアへ帰還しようとしているご一行。
 飛行中の機内で、タミーがゴードンに衛星電話を取り継ぐ。電話の相手は国防総省のデイヴィス少佐だ。
 デイヴィスはゴードンに、ブリッグス少佐と思しき遺体がバックホーン警察署に運び込まれ、部下のノックス大尉もそこにいることを伝える。彼らはふたたびサウスダコタへトンボ返りすることになる。
 また、連邦刑務所のマーフィー所長から電話。クーパーが脱走したことをゴードンの耳に入れる。

●ラスベガス市警

 ダギー/クーパーとナオミ・ワッツが署内の待合室のソファでぼんやり座っている。
 保険会社のブッシュネル社長が、3人の刑事たち(全員がおなじ”フスコ”という苗字だという小ネタあり)に、なぜダギーが執拗に狙われているのか、事情聴取している。
 ダギーは入社前に遭った交通事故のせいで、ときどき後遺症が出ることがある。今のぼんやりした状態もそのせいだと彼、ひょっとしたら妻のナオミもそう思っているのかも。
 保険の仕事は逆恨みされることもあるが、ダギーは優秀な社員で、誰かに命を狙われるような人間ではない、とブッシュネルは擁護する。

 ダギーの身元を刑事が詳しく調べたら、1997年以前のあらゆる記録が存在していないことが判る。
 運転免許証、パスポート、出生記録、納税証明書、社会保障番号といった重要なデータがいっさいがっさい消滅しているダギー。刑事たちは<証人保護プログラム>で守られている人物なのではないか、と推測する。

 そこで、ダギー/クーパーが手にしていたコーヒーの入ったマグカップを取り上げ、指紋とDNAをこっそり採取。それを知り合いの司法省の人間にまわして、より詳しい調査をするように算段する。
 これによって、クーパーの”正しい指紋”が警察やFBIのデータベースと照合されることになるだろうし、ドッペルゲンガーではない本物のクーパーの存在が、近々ゴードンたちの知るところになるかもしれない。

 またダギーの襲撃現場で採取された掌紋……あの拳銃に張り付いていた肉塊は、小人の殺し屋アイク・ザ・スパイクの手のひらの肉だった。もともとスパイクは警察のターゲットだったようで、これ幸いと、とっ捕まえに出かける刑事たち。
 潜伏先のモーテルから”J.T.”(こんなイニシャルの人、これまでに出てたっけな?)と呼ばれる人物に「怪我の治療のため休暇を取る」と連絡をし、スパイクは部屋から立ち去ろうとする。だが、廊下を封鎖していたフスコ刑事らによって、あっけなく逮捕される。

●ツイン・ピークス保安官事務所

 ルーシーとアンディが自宅で使うオットマン(一人がけの足乗せ付きソファ)をネットショップで選んでいる。
 アンディは赤のチェック柄を、ルーシーはベージュを買うと主張し、互いに譲らない。しばらくすると、アンディが折れ、ベージュを買うようにルーシーへ伝えるが、結局、ルーシーはアンディが欲しがっていた赤をチョイスする。
 それにしても。ルーシーはDELLのパソコン(なぜか二面モニター)を仕事で使いこなしているし、オンラインショッピングも利用しているのに、携帯電話の存在は認識できていないというのが、実に不思議。

●ツイン・ピークスのホーン家

 介護人が目を離した隙に”ジョニー”が家中を走り回っている。母親が彼を追いかけるが、ジョニーは穴が空くほどの勢いで壁に激突してしまう。額から流血し、床で失神しているジョニーのかたわらには、壁面にかけられていたスノコルミー滝の風景写真などが落ちている。

 このシーンだけを見ると、なにがなんだかわからないが、エンドクレジットを見ると、ジョニーとはつまり、オードリーの兄ジョニー・ホーンだということがわかる。
 ジョニーは発達障害で、オリジナルシリーズの時は、いつも頭にインディアンの羽根飾りをつけていた。インディアン……ふむ。
 また、このジョニーというキャラクターは『ツイン・ピークス』シリーズの中ではちょっと特殊な存在だ。ひとつの役をなんと3人の役者が引き継いできた。この最新版のジョニーを演じているのは、主にスタントマンとして活躍しているエリック・ロンデルという役者。

●ツイン・ピークスのブリッグス家

 トルーマン保安官、ホーク、そして息子のボビーがブリッグス少佐の妻ベティを自宅に訪ねる。ブリッグス少佐が亡くなる前、クーパーが彼と会いにきた日の様子を聞くためだ。

 突然の訪問だったはずなのに、彼ら3人が来訪することをベティは驚く様子がない。
 なぜなら、夫のブリッグス少佐はクーパー(ドッペルゲンガー)が自宅から立ち去ったあと、彼女に「いつか保安官とホークとボビーがお前にクーパーのことを尋ねに来るだろうから、その時に”これ”を渡してくれ」と、ことづけを残していたのだ。
 少佐は万年筆のような形をした金属製のカプセルをベティに託していた。

 25年前のボビーはバリバリの不良少年で、今のような姿を誰も想像すらしていなかった。それにも関わらず、ブリッグス少佐はボビーの未来の姿もはっきりと予見していた。彼が保安官の道を選ぶことも、何らかの手段で知っていたのだろう。ボビーはもちろん、夫の言葉に半信半疑だったベティも、少佐がすべて正しかったことがわかり、感極まる。

●バックホーン警察署

 ゴードン・コール以下、FBIチームが警察署に到着する。
 ダイアンは特に疲れた様子で、待合室の椅子に腰掛けるやいなや、一歩も動こうとしない。
 仕方なく彼女をその場に残し、出迎えたノックスや刑事のデイヴとともに、遺体の検分へ向かう。

 一人残されたダイアンの携帯に、突然ショートメールが届く。文面は<around the dinner table…>、つまりさっき黒クーパーが送信していたメッセージだ。
 彼は番号も知らないダイアンの携帯に、どうやってメールを送ることが出来たのだろう?
 黒クーパーがダイアンに何かしらのシグナルを送っている。ひょっとしたらクーパーと過ごした最後の夜に関係のある文言なのかもしれない。

 死体安置所への廊下を歩きながら、デイヴ刑事がブリッグス少佐の身元にたどり着いた顛末を、ゴードンたちにすべて報告する。

・ビル校長と殺された図書館職員のルースが不倫関係にあったこと。
・ルースの頭部が少佐の首無し死体とともに発見され、ビル校長が容疑者として勾留されたが、そのあとすぐに彼の妻が自宅で射殺された。こちらの容疑者としては一家の弁護士であり、彼女の不倫相手だったジョージが逮捕されたこと。
・その翌日、ビル校長の秘書の車が爆発して、彼女も死亡したこと ←新事実(爆弾は第二話で黒クーパーがジャックに細工させた)
・ビル校長はルースの助けを借りて、ブログを開設していた。彼らは<別の次元>について研究していて、その調査結果をそこに書き連ねていた。 ←新事実
・最後の更新は一週間前だった。「きょう、ついに我々はゾーンへ入り、そこで少佐に会った」と記述されていた。 ←新事実

 そのあまりにドラマティックすぎる報告を聞いて、「第二シーズンでは何が起こるんだ?(What happens in season 2?)」とアルバートはジョークを飛ばす。

 モルグでは鑑識官のコンスタンスが待っていた。ブリッグス少佐の遺体が、ベッドに安置されている。首の切り口は黒々と変色しているが、その他の部分はじつに生々しい。
 少佐は25年前、ツイン・ピークス近くの政府施設で焼死している。もし生きていれば72歳。だが、遺体は中年男性そのもので、どう見ても理屈に合わない。少佐の死の直前にクーパーが近くにいて、そして今現在、クーパーがサウスダコタに出現したことの因果関係をゴードンは(大声で)指摘する。
 また、コンスタンスは遺体の胃の中から、誰かの指輪(ダギーにナオミ・ワッツが贈ったものだが、彼らはまだダギーたちのことは把握していない)が出てきたことをゴードンたち報告する。もちろん彼らはダギーのことも、ナオミ・ワッツのこともまだ知らない。

●ツイン・ピークスの森の中

 「ワタシはアンタの足じゃない」と、ジェリー・ホーンの右足がジェリーに語りかける。
 怯えたジェリーは自分の右足を掴み、「どっか行け!」と投げ飛ばす。当然の事ながら、彼の足は彼の胴体と繋がっているため、オーバーヘッドキックのような要領で地面にひっくり返る。だからもう何やってんだよ、さっきからこの人は……。 

●ツイン・ピークス保安官事務所

 保安官とホークがブリッグス夫人から託された棒状のカプセルを検分している。中に何かが隠されているようだが、継ぎ目やボタンもなく、開ける手立てがまったく見当たらない。
 途方に暮れる二人を見て、ボビーがニヤついている。実はむかし父親に教えられて開け方を知っているのだ。 
 その方法とは、固い地面におもいっきり叩きつけること。シンプル。
 力強く二回コンクリートに叩きつけると、カプセルが開いて、中からメモが二枚出てくる。

 まず一枚目には赤い丸(太陽?)、同じく赤い下弦の月のようなもの、そして第2話で黒クーパーが持っていたトランプに描かれてたExperimentのようなマーク、そしてふたつの三角(ツイン・ピークス? オリジナルシリーズの24話で、少佐と丸太おばさんにも三角形ののアザがあることが示されていた)が描かれており、そのまわりに「ジャック・ラビットの宮殿から東に253ヤード/宮殿を立ち去る前に、そのエリアの土をおまえのポケットに入れておけ」というメッセージ、そして日付がふたつ(10/1、10/2)と時刻(2時53分)が記されている。
 保安官曰く「10月1日は明後日」とのこと。なので、この日は9月29日だということがわかる。延々と2ヶ月近く見ているこの新作は、折り返し地点を過ぎた第9話にいたっても、せいぜい数日くらいしかドラマのなかの時間は経過してないのかも。
 で、黒クーパーがダーリャに見せていたカードと、この紙切れに描かれたExperimentのようなマークが共通していることから、黒クーパーが探している”座標”と、この紙が指し示している場所は、同じ地点という気がするなあ……。2時53分といえば、クーパーと黒クーパーがふたたび入れ替わるはずだった時刻だし。

 すべてのシーンが出揃ったあと、タイムラインを整理すれば、どのエピソードとどのエピソードがシンクロしていたかが、もっとはっきりわかるはず。
 というのも───。
 実はある重要なシーンがトランプの裏表のように、シンクロした出来事として編集されていることを、TPマニアが突き止め、動画で検証している。

 ガラスの箱をめぐる重要なシーン……第1話と第2話でカップルがExperimentに襲撃されるまでのシーンと、第3話で出てくる謎の空間を飛行するクーパーや紫色の部屋のシーンなどが、すべて並列に編集されている、というのだ。
こういうの、気づいてないだけでたくさん起きてるんだろうな。

 また<ジャック・ラビットの宮殿>について。
 実はこれも、ボビーと父ブリッグスだけにわかる暗号だった。
 子供の頃、ボビーは父に連れられてそこに行ったことがあった。場所は少佐が働いていた基地のそばで、ボビーと父が空想で作り上げた架空の場所なのだ。ジャック・ラビットの宮殿という名前もボビーが名付けた。
 ここまでの展開はすべてブリッグス少佐の手のひらの上の出来事にも思える。そもそもボビーとローラがなぜカップルだったのかという部分も、意味深い。

 二枚目のメモにはタイプされた文字で、アルファベット一文字と三桁の数字の羅列と共に、”COOPER/COOPER/COO…”という文字が書かれている。
 これはオリジナルシリーズ第9話に出てくる書類の一部だ。

 そして、クーパーの部屋にブリッグス少佐が訪ねてくる。ブリッグスは自分の任務(銀河系の外を監視し、キャッチした電波を解析していること)について話し、彼がある日の未明(クーパーが謎の人物に撃たれた同じ時刻)に受信したデータをクーパーに示す。宇宙からのメッセージはほとんど乱数なのだが、突然”The Owls Are Not What They Seem(フクロウは見かけと違う)”、そして”COOPER/COOPER/COOPER”と3回(←ここ大事)という言葉を受信したのだという。

 今回カプセルの中から出てきた紙片は、そのとき少佐がクーパーに見せたプリントアウトの一部だろう。でも、どうせ小さく切り出すなら、ふつうはこんな意味深な切り方じゃなく、”COOPER/COOPER/COOPER”と全部見えるように切ると思うんだけどな。実際、こういう切り方をしたせいで、さっそくホークは「二人のクーパー?」って勘違いしちゃってるし(笑)。
 しかし、25年前のこのシーンを脚本に書いたとき、リンチやフロストはクーパーが3人に分裂することを想定していたのだろうか? それとも、旧シリーズを見返している中で「ああ、このとき3回繰り返して書いてるから、3人にしようか?」みたいに決めたんだろうか?

 このシーンが新旧おなじ第9話に出てくるというのも、偶然の一致ではないと思う。
 オリジナルシリーズの第9話も、今となっては今一度見なおすべき重要なエピソードだったことがわかる。

・ロネットの意識が回復。ボブの似顔絵を見せると半狂乱に。
・死んだジャック・ルノーの胃の中からさまざまな異物が出てくる。
・クーパーの元相棒だったウィンダム・アールが入院していた精神病院から脱走したことをアルバートがクーパーに教える。
・ローラが担当していたトレモンド夫人への食事の配達仕事をドナが引き継ぐ。のちに劇場版で明かされるが、トレモンド夫人と彼女の孫ピエール(演じているのはリンチの息子オースティン)は、ボブ一味。
・ダブル・R・ダイナーでログレディとブリッグス少佐が出会い、丸太が少佐にメッセージを伝える(台詞では語られないので、中身はわからない)。
・クーパーが夢の中で見たビジョン。ボブの顔の上にフクロウのイメージが重なる。

 いずれにしても、旧シリーズ第9話には、新シリーズへと引き継がれる伏線がたくさん登場しているので、じっくり見返す必要がある。
 
 

●バックホーン警察署の外

 ここの約2分間のシーンは、今回の白眉。
 ダイアンが外で一服してるところに、検死を終えたゴードンとタミーがやってくる。アルバートは来たくなかったらしい。
 先ほどの機内のシーンでも毛布にくるまってずっと眠っていたし、ひょっとしたら、このあたりの撮影中、アルバート役のミゲルは体調が思わしくなかったのかも(咽喉がんで闘病中だった)。

 で、ダイアンはタミーのことをずっと敵視しているし、タミーもそんなダイアンの内心を察して、目線を合わせようともしない。身体のラインを強調したタイトスーツを着て、ゴードンの横で始終カラダをくねらせているタミーは、仕事はできるかもしれないけど(FBIのアカデミーを主席で卒業した、という設定)、ダイアンにかぎらず、同姓から好かれることはまず無いだろう(笑)。
 ゴードンは女たちのバチバチを見て見ぬふりし、ダイアンの吸っている煙草をもらおうと手を伸ばす。タミーがたしなめるように『ゴードン』と言うけれど、彼はそれを無視。この場での優位をゴードンに認められ、ダイアンは上機嫌。ゴードンは目をつぶり、じっくりと煙草を吸う。だが、彼は一口だけですぐにダイアンに返し、「昔はよく一緒に吸ったな」と言う。数十年ぶりの再会から、ずっと二人の間に漂っていた緊張感が、このやりとりひとつでほぐれていることが伝わる。
 ローラ・ダーンの表情から察するに、このやりとりは台本に無いアドリヴのように見える。台詞やアクションのあいだの、たっぷりとした間(ま)が猛烈にすばらしい。
 ちなみにリンチは超ヘビースモーカーで、お気に入りの銘柄はアメリカン・スピリット。
 
 

●バックホーン警察署の取調室

 取調室にビル校長が呼び出されている。取り調べはタミーが行う。彼女が名前と所属を名乗ると、校長は「なんてことだ、FBIって〜〜」と言って、取り乱す。事件がどんどん大きくなっていることに、耐えられない様子。
 タミーが、ビル校長たちが作っていたブログ<ゾーンを探して(The Search for the Zone)>について質問する。2週間前、ビル校長は「別の次元と出会った」と記載していた。ビル校長は何年も前から、いろんな書籍を読み漁り、別の次元(ゾーン)の存在を信じて、研究を進めていたという。
 そして彼は「少佐に会った」ともブログに書いていた。校長いわく「隠された記録を見つけるのがルースは得意」だったそうで、「然るべき時に然るべきところへ行けば、別の次元へ入ることができ、然るべき人に会える」ということも、ルースが突き止めた。
 ビル校長はそれを実行し、そこに隠れていた少佐と邂逅した。少佐は「ここで冬眠している」とビル校長に言った。「誰かに見つからないようにして、別の場所へと移るために、重要な数字……座標を調べてくれ」とも。
 そこで彼らは軍のデータベースを調べて、座標を特定した。座標は忘れないように、ルースが自分の手に書いていたらしい。

 で、先週の木曜(←デイヴ刑事の尋問のとき、不自然な空白の時間があった日だ)、少佐に校長は数字を教えた。
 すると少佐は宙に浮かび上がり、「クーパー、クーパー」と二度つぶやいた。そして頭部が消えたらしい。それはとても美しい光景だった、と校長は回想する。
 そのあと、別の誰かが出てきて、彼の首をつかんで押し倒し、妻の名前を質問した。ビルはフィリスと答えた。
 ルースも殺された。たくさんの連中がそこにいた。そして、校長は自宅で目が覚めた。
 
 この話から推測すると、フィリスの名を校長に白状させたのは黒クーパーで、ルースを殺したのはウッドマンたちか?
 第2話のフィリップ(仮)とのやりとりで、黒クーパーがブリッグス少佐と会ったことはわかっている。それはきっとその木曜日の出来事だろう。
 ただ、欲しかった”座標”がルースの腕に書かれていたなら、彼女を殺した時点で、それを突き止めることができたはず。
 手に入れられなかったのだとしたら、その時点でルースのからだ(腕)はどこかに消えていた……と考えるのが妥当だろう。

 じゃあ、ルースの首から下を切り離し、どこかへ隠したのはブリッグス少佐のしわざだろうか?
 ビル校長の車のトランクから見つかった肉片がルースのものなら、ブリッグス少佐が校長を無意識に操って、ルースの下半身をどこかへ隠したのかも……?
 だが、そうなると、黒クーパーは校長の秘書のベティが”座標”を知っていると考えて、ジャックに車を細工させ(故障していた秘書の車がジャックの修理工場に持ち込まれていたため、レイたちが抱き込んだ?)、爆死させたのだろうか?

 タミーに事情を説明しながら、ますます取り乱すビル校長。彼の話に出てくる「少佐」が誰なのか特定するために、タミーが6人の男の顔写真を見せると、校長は迷いなくブリッグス少佐を指差した。発言の証拠になるよう、ブリッグス少佐の顔写真に丸をつけさせ、横に日付と署名をさせる。校長がここで書いた日付によると、この取り調べは9月20日に行われた模様。
 
 尋問にひととおり答えたあと、愛人のルースと出かけるはずだったバハマ旅行の話を、タミーにクドクド話している校長を見て、アルバートが冷めた目つきで「Fruitcake Anyone?(フルーツケーキでもどうだ?)」と悪態をつく。Fruitcakeにはホモの男性を罵倒する意味、また、頭のおかしいやつ、という意味がある。
 
 で、じつはこのビル校長とルースが作っていたというブログ”The Search for the Zone”は実在する。

http://thesearchforthezone.com/

 開設されたのは1997年6月1日。最終更新日は2015年の11月。
 1997年といえば、ダギーにまつわるさまざまなデータが消去された年と符合しているが、果たしてその関係は。
 ちなみにこのブログ、共同製作者のマーク・フロスト本人が作ったという噂(笑)。

 

●グレート・ノーザン・ホテル

 ベンジャミン・ホーンとビヴァリーが、また客室で謎の音の出どころを探している。警備員にも探させたそうだが、発信源を特定できなかったらしい。
 「なんだか催眠術にかかりそうな音ね」とビヴァリー。「修道院の鐘の音はこんな感じだよな」とベン。
 薄暗い部屋の中で怪しげな雰囲気になっている二人だが、台詞のニュアンスでわかるとおり、積極的に誘っているのはどちらか言えば彼女の方だ。
 結局このあと、偶発的にキスをしそうな流れになるのだが、ベンはキスをこらえる。昔の好色きわまりない彼を知る視聴者としては信じられない(笑)。

 

●バン・バン・バー

 今日のアクトは二組。
 まずはターンテーブリスト/サウンドプロデューサーのハドソン・モホーク
 WARP RECORDSから三枚のアルバムをリリースし、カニエ・ウェストやドレイクなどのサウンド・プロダクションも過去に担当。2012年にElectraglide、2015年にフジロックなどで来日経験もある。

 演奏曲は「Human」という未発表曲で、先日リリースされたサントラ『TWIN PEAKS: MUSIC FROM THE LIMITED EVENT SERIES』にも未収録。

 二組目は第4話に続いて登場するAu Revoir Simone(オ・ルヴォアール・シモーヌ)。
 こちらの演奏曲は「A Violent Yet Flammable World」。前回演奏した「Lark」と同じ『The Bird of Music』に収録されている楽曲で、フィル・スペクターっぽいビートが印象的。タイトルを直訳すると<凶暴なのに燃えやすい世界>って感じだろうか。ツイン・ピークスの世界観とまちがいなく直結するイメージ。

 で、これらの楽曲が鳴り響くなか、腋の下がやたら痒そうな若い女の子が登場。名前はエラ。
 彼女がボックス席で腋をボリボリと掻きむしっていると、別の女の子がやってくる。こっちのこの名前はクロエ。
「ゼブラが戻ってきたわよ」 とクロエ。エラは笑うだけで何も答えない。
「あんたと会うのもひさしぶりよね」とクロエが言うと、「仕事変えたからね」とエラは答える。「あいつにクビにされたのよ……たぶん仕事中ハイになってたから」
「覚えてないの?」
「そうよ……でも、それがなんだって言うの? ちゃんと働いてたのよ。バーガー出すだけの仕事なんだから」
「で、いま仕事はどうしてんのよ」
「向かいの店でバーガー出してる」
 笑い合うふたり。
「ペンギン見た?」と突然、エラ。
「いったい何の話?!」
 爆笑するふたり。

 腋にひどい発疹が出ている女の子を演じているのはシンガーソングライターのスカイ・フェレイラ。
 若干21歳でリリースしたファーストアルバム『Night Time My Time』のジャケットが、映画監督のギャスパー・ノエ撮影によるヌードだったことも話題になったシンガーソングライター(一応、オッパイありの方のジャケットを貼っておきます)。

 昨年出たプライマル・スクリームのアルバム『カオスモシス』収録の楽曲「Where The Light Gets In」にもフィーチャーされていた。

 そんな彼女、もともと大のリンチファンだったようで、昨年出たトリビュートアルバム『The Music Of David Lynch – Benefiting The David Lynch Foundation』で「Blue Velvet」をカヴァーしたり、ライヴではジュリー・クルーズの「Falling」もカヴァーしている。

 2013年にはFOREVER 21のファッション・アイコンに選ばれたりしているオシャレなお嬢さんなんだけど、ツイン・ピークスでは腋かいてる……。彼女のファンはいたいどう思ってるんだろうか。
 また、このエラとクロエが、どうストーリーラインに絡んでくるのかは、まったく不明。
 ただ、エラがボリボリ搔いてるのが、左うでの腋だというところは気になっている。


 ほとんど映像と音楽の力だけで押し切って見せた前回に比べ、物語を本線に戻して、グイグイとドライブさせていく───もちろん相変わらず異常に「間」の長いシーンもあったりして、リンチらしさは存分に感じさせるんだけど、未解明だった謎や伏線を次々と回収してみせた第9話。

 またブリッグス少佐を軸に、オリジナルシリーズとのつながりが更に濃くなってきました。
 もともとブリッグス少佐は、空軍でUFOに関する仕事───すなわち「ブルーブック・プロジェクト」に関わっていました。
 アメリカ軍とUFOを結びつけるような話は、どれもこれも眉唾モノばかりだけど、このブルーブック・プロジェクトはアメリカの公文書にも残っている本物の研究報告。1947~1969年のあいだに起きた、UFOや宇宙人と人間の遭遇事例を空軍が調査記録したもので、その数は1万2千件以上にのぼるそうです。

 こうして新作を一本ずつ見ていきながら、同時に旧作も振り返っていくと、ぼくが25年前に見ていた『ツイン・ピークス』ってなんだったんだろう? って改めて思います。
 少佐が小さなカプセルに遺したメッセージのように、リンチやフロストが四半世紀前から隠していた秘密を次々と見せられているような……。
 まさに……フクロウは見かけと違う!