今度の新作を見ていると、リンチやフロストがどこまで最初から意図したことだったのだろう……という点について、ことあるごとに考えてしまいます。
 たとえば、オリジナルシリーズで”ボブ”を演じていたフランク・シルヴァが、俳優ではなく大道具係だったことはよく知られてますよね。
 もともとフランクはこの『ツイン・ピークス』だけでなく、『デューン』や『ブルー・ベルベット』、『ワイルド・アット・ハート』にも参加している旧知のスタッフのひとりだった。それが、パイロット版の撮影時、ローラのベッドルームのショットで彼の姿が偶然カメラに見切れたのをリンチがおもしろがり、フランクはその後も”ボブ”としてドラマや映画に出演することになりました。
 リンチの著作『大きな魚をつかまえよう』の「ツイン・ピークス」の項には、他になにひとつ思い出がないみたいに、このエピソードたったひとつだけ紹介されていました。そしてこんな一文で文章はまとめられてる。

物事はこんなふうに起きて、きみを夢見心地にさせるんだ。ひとつのことが別の何かを導いてくれる。この流れに身を委ねていけば、全体が切り拓けるよ。デヴィッド・リンチ『大きな魚をつかまえよう』(P100)

 よく言えば現場でのインスピレーションを大事にする、悪く言えば適当。
 本人のキャラクターも相まって、ぼくはリンチの作家性の本質をそういうふうに理解してきたように思います。夢の中で見た物語のように、少しくらい突飛な展開でも「リンチらしいなあ」とおおむね受け入れてきました。
 しかし、今回の新作と絡めて旧作を辿っていくと、偶然が必然に、適当だったものが適切に変わっていることにはっきりと気がつくのです。
 それはパートナーであるマーク・フロストの担った部分が大きいでしょう。
 今回の新作を準備するにあたって、フロストが中心となってさまざまな謎や伏線がオリジナルシリーズや映画版のなかから丹念に洗い出されました。
 おそらくその作業工程のなかで誕生したのが、フロストの著作『ツイン・ピークス シークレット・ストーリー』だと思います(高い本なのでまだ手が出せていないのですが……)。

 新作へのステップという意味では、2014年にブルーレイボックスの特典映像としてお披露目された『ツイン・ピークス もうひとつのローラ・パーマー最期の7日間(TWIN PEAKS : THE MISSING PIECES)』には驚かされました。劇場版の本編から削除されたシーンを時系列で並べただけの作品……という触れ込みだったが、なんと90分もあります。それもそのはず。重要なシーンほど映画からカットされていたのだ!(笑)
 いちばんわかりやすい例で言えば、映画の目玉だったデヴィッド・ボウイの出演シーン。彼が演じていたジェフリーズ捜査官はアルゼンチンで姿を消して以降、2年以上行方不明になっていましたが、突然FBIに戻ってきて、彼が目撃した<悪魔たちの集会>についてゴードンたちに語ります。そして話を終えるとふたたび忽然と消えてしまう。
 映画ではジェフリーズの回想とFBIのなかのシーンがごちゃごちゃに混ぜて編集されていたので、いちど見たくらいでは正直なにが起きたのか、さっぱりわかりませんでした。
 ところが、この『もうひとつの〜』を見ると、実は全部、事細かにちゃんと撮影していた(笑)。彼が姿を消す前後のシーン……ブエノスアイレスのホテルだとか、ゴードンに彼が見てきた<悪魔たちの集会>について語るシーンも、本編では容赦なく切られちゃってたけど、ボウイはものすごく熱演してるんです。
 これも、おそらく尺がどうしたとか、そういう実際的な問題ではなく、説明的な映像を編集で意図的に省いてしまったとしか思えないんですよね。
 恐るべし……デヴィッド・リンチ。

 と、ちょっと前置きが長くなりましたが、第7話を見ていきましょう。

●ツイン・ピークスのどこかの森〜ベンジャミン・ホーンのオフィス

 カラフルな手編みのニットキャップ(第1話のベンジャミンの台詞によると彼らのお母さんが編んだ帽子)をかぶり、今風のアウトドア・ファッション(チャコールのスウェットの上にアロハシャツを重ね着)に身を包んだジェリー・ホーンが、森の奥で途方に暮れている。彼が言うには、愛車が盗まれたらしい。
 心配した兄ベンジャミンから電話がかかってくるが、会話はまったく噛み合わない。ジェリーは例のオランダから仕入れたハッパをキメて、ぶっ飛んでいる様子。25年経っても、あいかわらずどうしようもないな、この人……。

●ツイン・ピークス保安官事務所

 トイレのドアの中から発見した3枚の紙片について、ホークがフランク保安官に報告をしている。
 彼が見つけたのは、破られたローラ・パーマーの秘密の日記だった。
 ローラは自分の寝室のキャビネットの裏に隠してあった秘密の日記から、大事なページが破られていることに気がつき、急いでハロルド青年に日記帳を預けた。この一連のシーンは劇場版のなかに出てきた。
 また、オリジナルシリーズの第14話でハロルドは自殺したけれど、彼の縊死体や日記を部屋で最初に発見したのもホークだった。
 破り取られたページには、自分を12歳の頃から性的に弄んできた”ボブ”の正体、また白昼夢の中で出会ったアニー・ブラックバーンから伝えられた”ブラック・ロッジのなかに善いクーパーが閉じ込められている”というメッセージが書かれていた。
 この日記3枚をトイレのドアに隠したのはリーランドの仕業だ、とホークは確信している。
 ただ、彼女の日記から失われていたページは全部で4枚。残り1枚はどこにいったのだろうか? そこには何が書いてあったのだろうか?
 そんなこんなで、ホークとフランクはブラックロッジから帰還したクーパーの”異変”に、25年越しでようやく疑念を抱くことになった。
 フランクは、ロッジからの帰還直後のクーパーと最後に接触した人物───すなわち弟のハリー、そしてドクター・ヘイワード(ドナのお父さん。ローラの検死も担当)とコンタクトを取って、当時の詳しい状況を訊くことにする。

●ツイン・ピークスのどこかのあばら家

 薄汚れた一軒のあばら家の前で、アンディがいかにも貧しそうな長髪の白人青年に、敷地の中に止めてあったトラックについて職務質問している。
 そのトラックとは黒いフォードのピックアップトラック。リチャード・ホーンが交差点で子どもを轢き殺した車にそっくりである。
 青年はこの場で事情説明することを強硬に拒否。誰かに……たぶんリチャードに見られることを恐れているのかもしれない。
 アンディは「スパークウッド通りの先にある林道」を待ち合わせ場所として指示し、二時間後、彼とそこで再会することにする。

●フランクのオフィス

 ドクター・ヘイワードとフランクはSkypeを使って話すようだ。
 2017年にSkype? と思わなくもないけど、老人ふたりが気軽に使えるコミュニケーションツールとしては、これくらいが適当なのかも。あるいは単なる”プロダクト・プレイスメント”なのかもしれない。
 ヘイワード先生のSkypeのIDは”MiddleburyDoc”。これはヘイワードを演じているウォーレン・フロストが俳優引退後、実際に暮らしていた街がヴァーモント州ミドルベリーだったことに由来している模様。
 で、フランクのパソコン(彼のパソコンのモニターは机の天板の下に収納されていて、レバーを引くと自動でせり上がってくる!)に映し出されたヘイワード先生の顔が、相当にヨボヨボで、時代の経過を感じさせる。
 セリフの暗記も難しいようで、カンペを読んでいると思しき目線の移動がやたらおかしい。まあ、撮影時には90歳近かったんだからね。仕方ない話かも。それに引き換え、現在86歳で、まだまだクローズアップショットに耐えるルックスを保っている八千草薫はすごい(『ふれあいの郷』も現在佳境なのです)。
 きょうの朝食のメニューも思い出せない……とボヤくヘイワード先生だが、最後に彼が見たクーパーの様子が奇妙だったことは鮮明に記憶していた。I.C.U.にいたオードリー・ホーン(貸金庫での爆弾騒ぎに巻き込まれ、昏睡状態だった)の病室をクーパーは姿を消す前に訪ねていたらしい。
 ちなみにウォーレン・フロストは、このドラマの生みの親であるマーク・フロストの実の父親だ。『ツイン・ピークス』後は、大人気シットコム『となりのサインフェルド』に出演したのを最後に俳優を引退。ツイン・ピークスのあるワシントン州とはちょうど真反対に位置するバーモント州で、趣味の鱒釣りに精を出していた。そして、このシーンでひさびさにテレビ出演したが、今年2月に91歳で他界している。そんなこともあって、この第7話は彼に捧げられている。

●バック・ホーン警察署

 国防総省から派遣されたノックス大尉がやってきた。
 ブリッグス少佐は謎の失踪を遂げたあと、死んだと思われていた。しかし、この25年にわたって、さまざまな場所(おそらくは犯罪現場)で彼の指紋が確認されてきた。ノックスはその追跡調査を担当している。
 今回、バック・ホーン警察の鑑識官コンスタンスが遺体の身元を探すためにアップロードした指紋のデータをもとに、今回もノックスは指紋の出どころだけを確認しにきたつもりだったが、頭部の無い遺体として……しかも、失踪当時の推定年齢(40代後半)を持つ新しい遺体(死んでから5〜6日以内)としてブリッグスが発見されたことに驚く。
 上司であるデイヴィス大佐に報告を入れたのち、ノックスは「この遺体は機密扱いとなり、ごく近いうちにあなたたちの手を離れることになるだろう」とコンスタンスやデイヴ刑事に告げる。
 あと、ノックスや刑事たちは気に留める風ではなかったが、ブリッグスの遺体を見張るように、正体不明の人物(ホームレス風。第2話の冒頭、ビル校長の留置された檻の隣にいた男か? ボブや小人の仲間に酷似)が死体置き場周辺の廊下をウロついている。

●ゴードンのオフィス〜ダイアンのアパートメント

 トウモロコシをモチーフにした油絵や原爆実験のキノコ雲の写真が壁にかけられたオフィスで、ゴードンは椅子に深く腰掛け、ディズニー映画『80日間世界一周』のメロディを口笛で吹いている。
 原爆のキノコ雲の写真といえば、デビュー作『イレイザー・ヘッド』の主人公ヘンリーの部屋にもそれとなく飾ってありました。

 

 ゴードンの部屋には他にもフランツ・カフカの巨大な肖像写真が飾られています。

 ゴードンの補聴器がハウリングを起こすほど大きなノック音が響き、アルバートが入ってきた。
 自分は家でヌクヌクと過ごしながら、ひどい雨の中ダイアンのところへ差し向けたゴードンに対して、アルバートはおかんむりの様子。
 彼の報告では、昨夜のダイアンとのコンタクトはまったくの不首尾に終わった。そこで今度はゴードンが彼女の元へ行くことになった(もちろんアルバートも同伴で)。

 ダイアンが暮らすアパートを二人は訪問する。彼らを出迎えたのは若い優男。おそらく昨日、バーでダイアンが拾って連れ帰ったのだろう。
 もちろんダイアンはゴードンたちのことを歓迎していない。それどころか、ゴードンのこともアルバートのことも「クソ(F**K)」呼ばわりだ。
 クーパーと組んでいた頃からこんな女性だったのか、それともクーパーが失踪してせいでこうなっちゃったんだろうか……。
 ともあれ、ゴードンは、連邦刑務所に勾留されているクーパー(黒)に面会してもらい、彼をよく知っているダイアンの意見が聞きたい……と頼み込む。

 ダイアンは意外にもすんなりと聞き入れ、彼らは揃ってFBI専用機でサウスダコタへ向かう。

 機内ではゴードンとアルバートに、タミー捜査官がクーパーの指紋についてわかったことを報告している。
 二日前に採取された黒クーパーの指紋と、FBIのデータベースに入っているクーパーの指紋を比較すると、鏡写しにしたように左右が逆転していることを、彼女は発見していた。
 もちろんこれは赤い部屋の中に出てくる人々が、逆回転の言葉/動き方をすることに呼応しているのだろう。
 当のゴードンはそのことをとっくに把握していたようで、タミーの手を取り、彼の見立てを説明する。

 連邦刑務所に到着し、ダイアンはガラス越しにクーパーと対面する。
  二人が最後に会った夜のことなど、クーパーはたしかに記憶している様子だが、彼女はひと目見ただけで、目の前のクーパーに対して”違和感”を覚えている。
「あなた、誰……?」 ダイアンは振り絞るように問いかける。
「言っている意味がわからない」とシラを切る黒クーパー。
「わたしを見て……わたしを見てよ!」 ダイアンは黒クーパーを睨みながら、そう呟いたのだが、耐えきれずにその場を離れる。

 ローラ・ダーンが新シリーズに登場すると知ったときから、どのようなかたちでカイル・マクラクランと絡むのかを楽しみにしていましたが、ファーストコンタクトはとても悲しいシーンになっていた。
 面会室の闇の中で対峙するクーパーとダイアン。このシーンを見たとき、ぼくは『ブルー・ベルベット』でふたりが最初に出会うシーンのことを思い出さずにいられない。

 まるで亡霊のように暗闇の中から出現する女子高生のサンディ=ローラ・ダーン。不気味なのに美しい。
 『ブルー・ベルベット』のアメリカ公開は1986年、日本では1987年だったので、今年でちょうど30周年なんですね。カイルとローラ・ダーンの共演からも、それだけの月日が経っているわけです。それを踏まえてみると、このシーンの味わいは何倍にも増幅してしまう。

 刑務所の外で、ダイアンはゴードンに泣きながら伝える。
「あの男はわたしの知っているデイル・クーパーじゃない。(左胸を指差しながら)ここにあるべきものが失くなってるのよ」

●スパークウッド通りの先にある林道〜あばら家

 アンディが路肩にパトカーを停め、あの男が来るのを待っているが、誰も来る様子はない。それもそのはず、あばら家の前に、まだ黒いピックアップトラックは停まったままだから。
 たまりかねて、アンディはふたたびパトカーに乗り込む。 
 このシーンは新作の予告編でもフィーチャーされてましたね。

●連邦刑務所の所長室

 黒クーパーが看守に連れられてやってくる。所長は人払いをし、二人きりになる。ごていねいに監視カメラも切ってあるそうだ。
「あの犬の足(黒クーパーの乗っていた車のトランクから見つかった)、あれには4本足があった。1本は俺の車から見つかったが、残りの3本はあんたが今考えている情報と一緒に消えた。俺に何かあれば、あんたがここに来て欲しくない二人がやって来るぞ」と、視聴者には現時点でまったく意味のわからないセリフで所長を脅す黒クーパー。
所長が「おまえがこの件について知っているという証拠は?」と問いただすと、黒クーパーはひとこと「ジョー・マクラスキー」と答える。どうやらこれが所長の急所を突いたようで、一瞬で表情が変わり、へなへなと椅子に座り込む。
 黒クーパーは先に収監されているレイ・モンローも脱獄させること、また彼と一緒に逃亡するためのレンタカーなどを用意するように所長へ要求する。
 その際、車のトランクには”友だち”を入れておくように、とも。”友だち”って誰/何だろう?
 さらに黒クーパーは所長にこう言う。
「俺はあんたに興味などない。二度と会うこともない。ジョー・マクラスキーのことが誰かの耳に入ることもない。死んだストロベリーのこともな」
 
 そういえば、第2話でダーリャをモーテルの部屋で殺し、ジェフリーズ(仮)と通信したあと、端末から連邦刑務所のサーバにアクセスをして、なにかをダウンロードしていたけど、そこに所長の弱みとなるようなデータがなにか入っていたのだろうか? 所内の照明やセキュリティを自由にコントロールできる情報も手に入れていたせいで、黒クーパーが刑務所を意のままにあやつれたのかもしれない……。

●ラッキー7・インシュアランスの前の広場

 また警察沙汰になると困るからか、ナオミ・ワッツが腕組みをして、ダギーが出て来るのを待っているが、結局、待ちかねてオフィスへ向かう。
 社内のオフィスでは、退社時間を過ぎても、ダギー(クーパー)が鉛筆で落書きにいそしんでいる。彼に不正のカラクリを暴かれたかもしれない同僚のアンソニーは気が気でない様子。
 そこへ警察が車の爆破の件でダギーに事情を聞きに来るが、もちろんダギーはなにも答えることができない。
 そこへタイミングよくナオミがオフィスに到着。借金取りを撃退したときと同じように威勢よく喋り倒すので、刑事たちもたじろぐばかり。
 なぜダギーの車が爆破されたのか、刑事たちはたぶん事情を知りたかったのだろうが、結局なにも聞き出せないまま退散していく。

 昼間の武勇伝をナオミがダギーに語って聞かせながら、二人で広場に出ると、あの小人の殺し屋がピストル───ロレインのオフィスで張り切って殺しまくったせいでアイスピックが曲がってしまったから、ピストルに急遽持ち替えたのだろう───をかまえて(広場に立つ銅像の姿で暗示されていた?)飛び出してきた!
 しかし、いち早く気がついたクーパーはナオミを突き飛ばすと、ピストルを持った小人の右腕を掴んで、FBI仕込みのテクニックで地面に組み伏せ、喉元にチョップ一閃! 小人はその状態で引き金を引くが、銃弾はどこへやら。
 なぜかナオミも揉み合っている二人に組みつき、首を絞めたり、頭を叩いたりして加勢(笑)。

 すると、銃の鼻先にある石畳のなかから、いつのまにか赤い部屋の小人が変身した「木」が顔を出していて、『手を引きちぎれ! 手を引きちぎれ!』と叫んでいる! めちゃくちゃかわいい!
 おそらく「木」の姿はクーパーにしか見えていない。で、クーパーが手から銃をもぎとると、小人の殺し屋は一目散に走って逃げてしまう。
 調子の悪いときの加藤茶くらいしか動けなかったクーパーが、一瞬だけだが、ついに昔の彼を思い出したような俊敏な動きを見せた。覚醒間近か?
 誰かが通報したのか、遠くからパトカーのサイレンの音が近づいて来る。すこし満足そうな、そして懐かしそうな表情でそれを聞くクーパー。
 で、このあと犯人が残していったピストルが映り、銃把の部分に小さな肉片(あるいは干からびたガルモンボジーア?)のようなものがこびりついているのが見える。

●グレート・ノーザン・ホテル

 夜。懐かしいスノコルミーの滝からたくさんの水が流れ落ちている。
 ある客室が映り、室内にはグラスハープのような音色が小さく響いている。客からクレームでも出たのか、ベンジャミン・ホーンと秘書のビヴァリーが音の出所を探している。音は一週間前から鳴っていて、だんだん大きくなっているらしい。
 ビヴァリーがテーブルに置いてあった鍵の存在に気がつき、ベンジャミンに手渡す。ラスベガスからジェイドが投函したクーパーの部屋の鍵───315号室のものだ。約20年前にグレート・ノーザンの鍵はすべてカードキーに切り替わったらしいが、鍵を手にしたベンジャミンはクーパーのことや、自分も当事者の一人だったローラ・パーマー事件のことなどを思い出す。
 音のことは翌朝メンテナンス係に調べさせることにした二人。ビヴァリーの退社時間はとっくに過ぎている。ベンジャミンとビヴァリーのあいだに、なんとなく色っぽい空気が流れるが、なんとか我慢したベンジャミン。しかし、一線を越えるのは、たぶん時間の問題だろう。

●ビヴァリーの家

 年寄りの看護婦が仕事を終えて玄関から出てくるのと同時に、残業を終えたビヴァリーが帰宅してくる。
 リヴィングでは車椅子に乗った中年男が彼女の帰りを待っていた。彼女の夫らしい。重い病気なのか、表情に乏しく、会話のスピードも緩慢だ。彼は帰宅が遅くなった理由をビヴァリーに詰問するが、それまで優しく接していた彼女のイライラが爆発。黙って見つめる夫に怒りをぶつけるのだった。こりゃますますベンジャミンと浮気する日も近いな……。

●バン・バン・バー

 大音量でブッカーT & THE MG’sの『グリーン・オニオンズ』が流れている。客はまだおらず、バーテンのジャン・ミシェル・ルノーと掃き掃除をしている若者の二人だけが店内にいる。
 そこへ電話がかかってくる。相手の声が聞こえないので、ジャン・ミシェルの話から類推するしかないのだが、相変わらず売春の手引きをやっているようだ。どうやら客にあてがった女二人がどちらも15歳の女子高生だったらしい。ここにもまた懲りない男がひとり……。

●深夜の連邦刑務所

 約束の午前1時。所長の手引きでレイと共にあっさりと脱獄する黒クーパー。所長にどんな理由があるのかわかりませんが、手伝っている看守もいることから、刑務所ぐるみで何かを隠蔽したい様子。どいつもこいつも腐ってるね。

●ダブル・R・ダイナー

 夜も大賑わいのダイナー。シェリー、ハイジ、帳簿を付けているノーマのほかに、もうひとり若いウェイトレスも働いている。
 そこへ男がひとり駆け込んでくる。『なあ、ビリーを見なかったか?』
 『見てないわ』 と答えたのはたぶん若いウェイトレス。ビリーという名前に聞き覚えはないけれど、ここまでの展開を考えると、あの黒いフォードのトラックの持ち主だった白人の青年がビリーかもしれない。
 男が立ち去ると、店内はすぐに元のくつろいだ雰囲気へと戻る。
 そしてダイナーの映像に乗せて、キャスト&スタッフクレジット。
 今回は恒例の演奏シーン@バン・バン・バーが省略された代わりに、ダイナーのBGMとしてサント&ジョニーの『SLEEP WALK』が流れている。

 サーフ・ギター・インストの大名曲で、1959年にニューヨーク・ブルックリン出身のサント&ジョニー・ファリーナ兄弟によって書かれ、演奏された。哀愁のあるメロディはスティール・ギター担当のサントが奏でている。
 タイトルの”SLEEP WALK”とはそのままズバリ<眠りながら歩く>という意味。「夢遊病」と訳す日本人が多いけれど、ピーター・バラカンさんによれば、この”SLEEP WALK”に「病」の要素は無く、もっとロマンティックなイメージを含んだ言葉らしい。
 また意味が転じて、<眠りながらでも出来るような容易いこと>という意味もあるそう。
 夜中のギグを終え、興奮が収まらなかった二人が深夜にジャムをしていて、出来上がった曲だという。
 その年の8月にビルボードTOP40入りすると、9月後半、2週にわたって全米1位を記録。その後も11月まで40位以内に留まり続ける大ヒットとなった。
 昼と夜とで別の顔を持っていたローラ・パーマー。まだ夢の中を漂っているようなクーパーの姿。
 このドラマの中に出てくる人たちがみな闇の中を彷徨っている=SLEEP WALKしてる、ってことなのかもね。