[COLUMN] ツイン・ピークス The Return 観察日記(第7話)

 今度の新作を見ていると、リンチやフロストがどこまで最初から意図したことだったのだろう……という点について、ことあるごとに考えてしまいます。
 たとえば、オリジナルシリーズで”ボブ”を演じていたフランク・シルヴァが、俳優ではなく大道具係だったことはよく知られてますよね。
 もともとフランクはこの『ツイン・ピークス』だけでなく、『デューン』や『ブルー・ベルベット』、『ワイルド・アット・ハート』にも参加している旧知のスタッフのひとりだった。それが、パイロット版の撮影時、ローラのベッドルームのショットで彼の姿が偶然カメラに見切れたのをリンチがおもしろがり、フランクはその後も”ボブ”としてドラマや映画に出演することになりました。
 リンチの著作『大きな魚をつかまえよう』の「ツイン・ピークス」の項には、他になにひとつ思い出がないみたいに、このエピソードたったひとつだけ紹介されていました。そしてこんな一文で文章はまとめられてる。

物事はこんなふうに起きて、きみを夢見心地にさせるんだ。ひとつのことが別の何かを導いてくれる。この流れに身を委ねていけば、全体が切り拓けるよ。デヴィッド・リンチ『大きな魚をつかまえよう』(P100)

 よく言えば現場でのインスピレーションを大事にする、悪く言えば適当。
 本人のキャラクターも相まって、ぼくはリンチの作家性の本質をそういうふうに理解してきたように思います。夢の中で見た物語のように、少しくらい突飛な展開でも「リンチらしいなあ」とおおむね受け入れてきました。
 しかし、今回の新作と絡めて旧作を辿っていくと、偶然が必然に、適当だったものが適切に変わっていることにはっきりと気がつくのです。
 それはパートナーであるマーク・フロストの担った部分が大きいでしょう。
 今回の新作を準備するにあたって、フロストが中心となってさまざまな謎や伏線がオリジナルシリーズや映画版のなかから丹念に洗い出されました。
 おそらくその作業工程のなかで誕生したのが、フロストの著作『ツイン・ピークス シークレット・ストーリー』だと思います(高い本なのでまだ手が出せていないのですが……)。

 新作へのステップという意味では、2014年にブルーレイボックスの特典映像としてお披露目された『ツイン・ピークス もうひとつのローラ・パーマー最期の7日間(TWIN PEAKS : THE MISSING PIECES)』には驚かされました。劇場版の本編から削除されたシーンを時系列で並べただけの作品……という触れ込みだったが、なんと90分もあります。それもそのはず。重要なシーンほど映画からカットされていたのだ!(笑)
 いちばんわかりやすい例で言えば、映画の目玉だったデヴィッド・ボウイの出演シーン。彼が演じていたジェフリーズ捜査官はアルゼンチンで姿を消して以降、2年以上行方不明になっていましたが、突然FBIに戻ってきて、彼が目撃した<悪魔たちの集会>についてゴードンたちに語ります。そして話を終えるとふたたび忽然と消えてしまう。
 映画ではジェフリーズの回想とFBIのなかのシーンがごちゃごちゃに混ぜて編集されていたので、いちど見たくらいでは正直なにが起きたのか、さっぱりわかりませんでした。
 ところが、この『もうひとつの〜』を見ると、実は全部、事細かにちゃんと撮影していた(笑)。彼が姿を消す前後のシーン……ブエノスアイレスのホテルだとか、ゴードンに彼が見てきた<悪魔たちの集会>について語るシーンも、本編では容赦なく切られちゃってたけど、ボウイはものすごく熱演してるんです。
 これも、おそらく尺がどうしたとか、そういう実際的な問題ではなく、説明的な映像を編集で意図的に省いてしまったとしか思えないんですよね。
 恐るべし……デヴィッド・リンチ。

 と、ちょっと前置きが長くなりましたが、第7話を見ていきましょう。

●ツイン・ピークスのどこかの森〜ベンジャミン・ホーンのオフィス

 カラフルな手編みのニットキャップ(第1話のベンジャミンの台詞によると彼らのお母さんが編んだ帽子)をかぶり、今風のアウトドア・ファッション(チャコールのスウェットの上にアロハシャツを重ね着)に身を包んだジェリー・ホーンが、森の奥で途方に暮れている。彼が言うには、愛車が盗まれたらしい。
 心配した兄ベンジャミンから電話がかかってくるが、会話はまったく噛み合わない。ジェリーは例のオランダから仕入れたハッパをキメて、ぶっ飛んでいる様子。25年経っても、あいかわらずどうしようもないな、この人……。

●ツイン・ピークス保安官事務所

 トイレのドアの中から発見した3枚の紙片について、ホークがフランク保安官に報告をしている。
 彼が見つけたのは、破られたローラ・パーマーの秘密の日記だった。
 ローラは自分の寝室のキャビネットの裏に隠してあった秘密の日記から、大事なページが破られていることに気がつくと、懇意にしていたハロルド青年に日記帳を預けた(この一連のシーンは劇場版のなかに出てくる)。

 オリジナルシリーズの第14話でハロルドは自殺したけれど、彼の縊死体や日記を部屋で最初に発見したのが、ホークだった。

 破り取られたページには、自分を12歳の頃から性的に弄んできた〈ボブ〉の正体、また白昼夢の中で出会ったアニー・ブラックバーンから伝えられた〈ブラック・ロッジのなかに善いクーパーが閉じ込められている〉という非常に重要なメッセージが書かれていた。

 この日記3枚をトイレのドアに隠したのはリーランドの仕業だ、とホークは確信している。
 ただ、彼女の日記から失われていたページは全部で4枚。残り1枚はどこにいったのだろう? そこには何が書いてあったのだろうか?
 そんなこんなで、ホークとフランクはブラックロッジから帰還したクーパーが〈善いクーパー(Good Cooper)〉ではないことに、25年越しでようやく疑念を抱いた。

 フランクは、ロッジから帰還したクーパーと最後に接触した人物───弟のハリー・トルーマン、ドクター・ヘイワード(ドナのお父さん。ローラの検死も担当)にコンタクトを取り、当時の詳しい状況を訊くことにする。

●ツイン・ピークスのどこかのあばら家

 みずぼらしいあばら家の前で、長髪の白人青年にアンディが職務質問している。敷地の中に止めてあったトラックは、リチャードがひき逃げの時に乗っていたもののようだ。
 青年はこの場で事情説明することを拒否。誰か……おそらくはリチャードに知られることを恐れているのかもしれない。

 アンディはスパークウッド通りの先にある林道で待ち合わせ、二時間後、彼とそこで再会して、あらためて話を聞くことにすることにする。

●フランクのオフィス

 ドクター・ヘイワードとフランクはSkypeを使って話すようだ。
 2017年にSkype? と思わなくもないけど、老人ふたりが気軽に使えるコミュニケーションツールとしては、これくらいが適当なのかも。あるいは単なる”プロダクト・プレイスメント”なのかもしれない。
 ヘイワード先生のSkypeのIDは”MiddleburyDoc”。これはヘイワードを演じているウォーレン・フロストが俳優引退後、実際に暮らしていた街がヴァーモント州ミドルベリーだったことに由来している模様。
 で、フランクのパソコン(彼のパソコンのモニターは机の天板の下に収納されていて、レバーを引くと自動でせり上がってくる!)に映し出されたヘイワード先生の顔が、相当にヨボヨボで、時代の経過を感じさせる。
 セリフの暗記も難しいようで、カンペを読んでいると思しき目線の移動がやたらおかしい。まあ、撮影時には90歳近かったんだからね。仕方ない話かも。それに引き換え、現在86歳で、まだまだクローズアップショットに耐えるルックスを保っている八千草薫はすごい(ドラマ『ふれあいの郷』も現在佳境です)。
 きょうの朝食のメニューも思い出せない……とボヤくヘイワード先生だが、最後に彼が見たクーパーの様子が奇妙だったことは鮮明に記憶していた。
 I.C.U.にいたオードリー・ホーン(彼女は貸金庫での爆弾騒ぎに巻き込まれ、昏睡状態だった)の病室を、クーパーは姿を消す前に訪ねていたらしい。
 しばらくして病室から出てきた彼は、ドクターの顔を見た。そのときもクーパーの表情は奇妙だったという。
 ドクターが呼びかけても答えもせず、彼はどこかに立ち去ってしまった。

 ちなみにウォーレン・フロストは、このドラマの生みの親であるマーク・フロストの実の父親だ。『ツイン・ピークス』後は、大人気シットコム『となりのサインフェルド』に出演したのを最後に俳優を引退。ツイン・ピークスのあるワシントン州とはちょうど真反対に位置するバーモント州で、趣味の鱒釣りに精を出していた。そして、このシーンでひさびさにテレビ出演したが、今年2月に91歳で他界している。そんなこともあって、この第7話は彼に捧げられている。

●バック・ホーン警察署

 国防総省から派遣されたノックス中尉(WOWOWの字幕では大尉になっていたが、大尉はCaptainだ)がノックス刑事をたずねてくる。

 ブリッグス少佐は火事で死んだはずだった。しかし、この25年にわたって、さまざまな場所(おそらくは犯罪現場)で彼の指紋が確認されてきた。ノックスはその追跡調査を担当している。
 今回、バック・ホーン警察の鑑識官コンスタンスが遺体の身元を探すためにアップロードした指紋のデータをトレースして、彼女はやってきた。今回もノックスは指紋の出どころだけを確認しにきたつもりだったが、頭部の無い遺体として……しかも、失踪当時の推定年齢(40代後半)を持つ新しい遺体(死んでから5〜6日以内)として彼が発見されたことに驚愕する。

 上司であるデイヴィス大佐に報告を入れたのち、ノックスは「遺体は機密扱いとなり、ごく近いうちにあなたたちの手を離れることになるだろう」とコンスタンスやデイヴ刑事に告げる。
 あと、ノックスや刑事たちは特に気に留める風ではなかったが、ブリッグスの遺体を見張るように、正体不明の人物(ホームレス風/第2話の冒頭、ビル校長の留置された檻の隣にいた男か? ボブや小人の仲間に酷似)がモルグ周辺の廊下をウロついている。

●ゴードンのオフィス〜ダイアンのアパートメント

 トウモロコシをモチーフにした油絵や原爆実験のキノコ雲の写真が壁にかけられたオフィスで、ゴードンは椅子に深く腰掛け、ディズニー映画『80日間世界一周』のメロディを口笛で吹いている。
 原爆のキノコ雲の写真といえば、デビュー作『イレイザー・ヘッド』の主人公ヘンリーの部屋にもそれとなく飾ってあった。

 

 ゴードンの部屋には他にもフランツ・カフカの巨大な肖像写真が飾られている。

 補聴器がハウリングを起こすほど大きなノック音が響き、アルバートが入ってきた。
 自分は家でヌクヌクと過ごしながら、ひどい雨の中ダイアンのところへ差し向けたゴードンに対し、アルバートはおかんむりだ。
 彼の報告では、昨夜のダイアンとのコンタクトはまったくの不首尾に終わった。そこで今度はゴードンが彼女の元へ行くことになった(もちろんアルバートも同伴で)。

 ダイアンが暮らしているアパートを二人は訪問する。彼らを出迎えたのは若いヤサ男。昨夜、ダイアンがバーで拾って連れ帰ったのだろう。
 もちろんダイアンはゴードンたちのことを歓迎していない。それどころか、ゴードンのこともアルバートのことも「クソ(F**K)」呼ばわりだ。
 クーパーと組んでいた頃からこんな女性だったのか、それともクーパーが失踪してせいでこうなっちゃったんだろうか……。

 ともあれ、ゴードンは、連邦刑務所に勾留されている黒クーパーに面会してもらい、彼をよく知るダイアンの意見が聞きたい……と頼む。

 ダイアンは意外にすんなりと申し出を聞き入れ、ゴードンたちはふたたびFBI専用機でサウスダコタへ向かった。

 機内でタミー捜査官がゴードンとアルバートに、黒クーパーの指紋について新たにわかったことを報告している。
 二日前に採取された黒クーパーの指紋と、FBIのデータベースに入っているクーパーの指紋を比較すると、鏡写しにしたように左右が逆転していることを、彼女は発見していた。
 もちろんこれは赤い部屋の中に出てくる人々が、逆回転の言葉/動き方をすることに呼応しているのだろう。
 当のゴードンはそのことをとっくに把握していたようで、タミーの手を取り、彼の見立てを説明する。

 姿を消していた25年間のあいだに一枚だけ撮られた写真をアルバートがタミーに見せる。
 リオの郊外に大きな邸宅を彼は持っていて、そのプールサイドを歩いているところが撮られている。
 FBIはある程度、クーパーを泳がし、彼の行方に関して情報を持っているのだ。
 それもそうだろう。第2話で連邦刑務所について調べようとしたクーパーは、FBI時代のIDやパスワードを入力していた。辞めた人間がいつまでもアカウントをそのまま使えるなんて普通ならおかしい話だ。

●ヘンクトン連邦刑務所

 連邦刑務所に到着した一行。ダイアンは黒クーパーと二人きりで対面する。

 「俺に腹を立てているのか?」
 「あなたはどう思ってるの?」
 「腹を立てているんだろうな」
 「最後にあったのはいつ?」
 「君の家だったよな」
 「そうよ……あの夜のことを覚えてる?」
 「いつも思い出してるよ」
 「わたしもよ、一生忘れないわ……」

 そして、ダイアンは振り絞るように問いかける。
 「で、あなたは誰なの」
 「それはどういう意味だ、ダイアン」とシラを切る黒クーパー。
 「わたしを見て……わたしを見て!」 ダイアンは黒クーパーを睨みながら、そう呟くのだが、耐えきれずにその場を離れる。

 ローラ・ダーンが新シリーズに登場すると知ったときから、どのようなかたちでカイル・マクラクランと絡むのかを楽しみにしていましたが、ファーストコンタクトはとても悲しいシーンになっていた。
 面会室の闇の中で対峙するクーパーとダイアン。このシーンを見たとき、ぼくは『ブルー・ベルベット』でふたりが最初に出会うシーンのことを思い出さずにいられない。

 まるで亡霊のように暗闇の中から出現する女子高生のサンディ=ローラ・ダーン。不気味なのに美しい。
 『ブルー・ベルベット』のアメリカ公開は1986年、日本では1987年だったので、今年でちょうど30周年なんですね。カイルとローラ・ダーンの共演からも、それだけの月日が経っているわけです。それを踏まえてみると、このシーンの味わいは何倍にも増幅してしまう。

 刑務所の外で、ダイアンはゴードンに泣きながら伝える。
 「あれはわたしの知っているデイル・クーパーじゃない。時間が経って、ただ外見が変わったんじゃないの。(左胸を指差しながら)ここにあるべきものが失くなってるのよ」
 それを聞けただけでも充分だよ、とゴードンは抱き寄せてダイアンを慰める。しかしゴードンは心から彼女に同情するというよりも、なにか彼女自身のことを確かめるような目で見つめている。
 「さっき話していた〈あの夜〉のことというのはなんだ?」とゴードンは聞く。だが、ダイアンは「いつか話す」とはぐらかす。

 元の牢屋に戻ったクーパーは看守にこう言う。
 「所長に会いたい。ストロベリーについて話すことがあると伝えてくれ」
 

●スパークウッド通りの先にある林道/あばら家

 アンディが路肩にパトカーを停めて、男が来るのを待っている。約束の時間をだいぶ過ぎているが来る様子はない。
 それもそのはず、あばら家の前に、まだ黒いピックアップトラックは停まったままだ。おまけにさっき閉まっていた扉が半開きになっていて、なにやら不穏な雰囲気を醸している。
 たまりかねて、アンディはふたたびパトカーに乗り込む。 

 このシーンは新作の予告編でもフィーチャーされてましたね。

●連邦刑務所の所長室

 黒クーパーが看守に連れられてやってくる。所長は人払いをし、二人きりになる。ごていねいに監視カメラも切ってあるそうだ。しかし、用心のために所長は黒クーパーに銃を向けながら話をする。

「犬の足(黒クーパーの乗っていた車のトランクから見つかった)。あの犬の足は4本。1本は俺の車から見つかったが、残りの3本はあんたが今考えている情報と一緒に消えた。俺に何かあれば、あんたがここに来て欲しくない二人がやって来る」
 と、視聴者には現時点でまったく意味のわからないセリフで所長を脅す黒クーパー。
 所長が「おまえがこの件について知っているという証拠は?」と問いただすと、黒クーパーはひとこと「ジョー・マクラスキー」と答える。
 どうやらこれが所長の急所を突いたようだ。一瞬で表情が変わって、へなへなと椅子に座り込む。
 黒クーパーは先に収監されているレイ・モンローも脱獄させること、彼と一緒に逃亡するためのレンタカーを午前1時までに用意するように所長へ要求する。
 その際、車のグローブボックスに〈友だち〉を入れておくように、とも。
 〈友だち〉って誰/何だろう?
 さらに黒クーパーは所長に言う。
「俺を生きてここから出すつもりがないと言うなら、犬の足のことを思い出せ。あんたに興味などない。二度と会うこともない。ジョー・マクラスキーのことが誰かの耳に入ることもない。死んだストロベリー氏のこともな」

 連邦刑務所のデータベースには何が入ってたんだろう?

●ラッキー7・インシュアランスの前の広場

 また警察沙汰になると困るからか、ナオミ・ワッツが腕組みをして、ダギーの帰りを会社の前の広場で待っている。

 オフィスでは、退社時間を過ぎても、ダギー/クーパーが鉛筆で落書きにいそしんでいる。
 彼に不正を暴かれたかもしれない同僚のアンソニーは気が気でない様子だが、そこに刑事が三人、車が粉々になった件でダギーに事情を聞きに来る。
 もちろんダギーはなにも答えることができない。
 タイミングよく、待ちくたびれたナオミがオフィスまでダギーを迎えにやってきた。借金取りを撃退したときと同じように威勢よく喋り倒すので、刑事たちもたじろぐばかり。
 なぜダギーの車が爆破されたのか、刑事たちはたぶん事情を知りたかったのだろうが、結局、なにも聞き出せないまま退散していく。

 昼間の武勇伝をナオミがダギーに語って聞かせながら、エントランスを出たところで、あの小人の殺し屋がピストル───ロレインのオフィスで張り切って殺しまくったせいでアイスピックが曲がってしまったので、急遽、武器を替えたのだろう───をかまえて(広場に立つ銅像の姿で暗示されていた?)飛び出してきた。
 しかし、いち早く気配を察知したダギー/クーパーはナオミを突き飛ばすと、小人の右腕を掴み、FBI仕込みのテクニックで地面に組み伏せると、喉元にチョップ一閃!
 小人はその状態で引き金を引くが、銃弾はどこへやら。
 なぜかナオミも揉み合っている二人に組みついて、首を絞めたり、頭を叩いたりして加勢(笑)。

 すると、銃の鼻先にある石畳のなかから、元・赤い部屋の小人であり、〈腕〉でもある〈木〉が顔を出し、クーパーに『手を引きちぎれ! 手を引きちぎれ!』と叫ぶ!
 なんだかめちゃくちゃかわいいぞ。ただし〈木〉の姿はクーパーにしか見えていない。
 クーパーが手から銃をもぎとると、小人の殺し屋は一目散に走って逃げる。
 調子の悪いときの加藤茶くらいしか動けなかったクーパーだったが、一瞬だけFBIらしい俊敏な動きを見せた───覚醒間近か?

 誰かが通報したのか、遠くからパトカーのサイレンの音が近づいて来る。
 すこし満足そうな、そして懐かしそうな表情でそれを聞いているクーパー。
 周囲には警戒線が張られ、上空にはヘリが飛び、テレビの取材陣も殺到している。
 このあと犯人が残していったピストルが映ると、銃把の部分に小さな肉片のようなものがこびりついている。

●グレート・ノーザン・ホテル

 ライトアップされた夜のスノコルミー滝からたくさんの水が流れ落ちている。

 ある客室のなかでグラスハープのような音色が小さく響いている。
 客からクレームでも出たのか、ベンジャミン・ホーンと秘書のビヴァリーが音の出所を探している。音は前の週から鳴っていて、次第に大きくなっているらしい。

 ビヴァリーがテーブルに置いてあった鍵の存在に気がつき、ベンジャミンに手渡す。
 ラスベガスからジェイドが投函したクーパーの部屋の鍵───315号室のものだ。
 約20年前にグレート・ノーザンの鍵はすべてカードキーに切り替わったらしいが、鍵を手にしたベンジャミンはクーパーのことや、自分も当事者の一人だったローラ・パーマー事件のことなどを思い出す。
 音の問題はメンテナンス係に調べさせることにした二人。ビヴァリーの退社時間はとっくに過ぎている。ベンジャミンとビヴァリーのあいだに、なんとなくエロティックな空気が流れるが、なんとか我慢したベンジャミン。
 しかし、ベンのことだから一線を越えるのは、たぶん時間の問題だろう……。

●ビヴァリーの家

 看護婦が仕事を終えて玄関から出てくるのと同時に、残業を終えたビヴァリーが帰宅してくる。
 リヴィングでは車椅子に乗った中年男が彼女の帰りを待っていた。彼女の夫らしい。
 重い病気なのか、鼻には呼吸器を付け、点滴も打っている。表情に乏しく、会話のスピードも緩慢だ。
 彼は帰宅が遅くなった理由をビヴァリーに詰問するが、それまで優しく接していた彼女のイライラが爆発。
 黙って見つめる夫に怒りをぶつけるのだった。こりゃますますベンジャミンと浮気する日も近いな……。

●ロードハウス

 大音量でブッカーT & THE MG’sの『グリーン・オニオンズ』が流れている。
 客はまだおらず、バーテンのジャン・ミシェル・ルノーと掃き掃除をしている若者の二人だけがいる。
 そこへ電話がかかってくる。
 相手の声が聞こえないので、ジャン・ミシェルの話から類推するしかないのだが、相変わらず売春の手引きをやっているようだ。
 どうやら客にあてがった女二人がどちらも15歳の女子高生だったらしい。ここにもまだ懲りない男が……。

●深夜の連邦刑務所

 約束の午前1時。所長の手引きでレイと共にあっさりと脱獄する黒クーパー。先に捕まっていたレイも一緒だ。
 所長にどんな理由があるのかわからないが、手伝っている看守もいることから、刑務所ぐるみで何かを隠蔽したい様子。どいつもこいつも腐ってるね。

●ダブル・R・ダイナー

 夜も大賑わいのダイナー。シェリー、ハイジ、帳簿を付けているノーマのほかに、もうひとり若いウェイトレスも働いている。
 そこへ男がひとり駆け込んでくる。
 「なあ、ビリーを見なかったか?」
 「見てないわ」 と答えたのはたぶん若いウェイトレス。
 ビリーという名前に聞き覚えはないけれど、ここまでの展開を考えると、あの黒いフォードのトラックの持ち主だった白人の青年がビリーかもしれない。
 男が立ち去ると、店内はすぐに元のくつろいだ雰囲気へと戻る。
 そして、ダイナーの映像に乗せて、キャスト&スタッフクレジット。
 今回は恒例の演奏シーン@バン・バン・バーが省略された代わりに、ダイナーのBGMとしてサント&ジョニーの『SLEEP WALK』が流れている。

 サーフ・ギター・インストの大名曲で、1959年にニューヨーク・ブルックリン出身のサント&ジョニー・ファリーナ兄弟によって書かれ、演奏された。哀愁のあるメロディはスティール・ギター担当のサントが奏でている。
 タイトルの「SLEEP WALK」とはそのままズバリ〈眠りながら歩く〉という意味。「夢遊病」と訳す日本人が多いけれど、ピーター・バラカンさんによれば、この〈SLEEP WALK〉に〈病気〉のニュアンスは無くて、もっとロマンティックなイメージを含んだ言葉らしい。
 また意味が転じて、〈眠りながらでも出来るくらいたやすいこと〉という意味もあるそうだ。
 夜中のギグを終え、興奮が収まらなかった二人が深夜にジャムをしていて、出来上がった曲だという。

 その年の8月にビルボードTOP40入りすると、9月後半、2週にわたって全米1位を記録。その後も11月まで40位以内に留まり続ける大ヒットとなった。
 昼と夜とで別の顔を持っていたローラ・パーマー。まだ闇の中を漂っているようなクーパーの姿。
 このドラマの中に出てくる人たちはみな夢の中を彷徨っている=つまり〈SLEEP WALK〉してる、ってことなのかもね。
 
 

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