今回のエピソードは最後まで見通すのがほんとうに大変だった……。
 と言っても、けっして苦痛なわけじゃないんだけど。

●ラッキー7・インシュアランスのオフィス前の広場〜ダギーの家

 先週のエンディングからずっと同じ場所……職場の前の広場にクーパーは佇んでいる。
 左腕の袖口あたりをやたらと引っ張っている(ツイン・ピークスにおいて、左腕への異変は大事なシグナル)。
 見兼ねた巡回の警官によって自宅まで彼を送る。
 ダギー/クーパーを出迎えたナオミ・ワッツは玄関で、ダギーと愛人のジェイドのツーショット写真が入った封筒を発見する。

 このチクリはダギーの命を狙っている連中ではなく、愛人との逢瀬を知っていた会社の同僚調査員アンソニーの仕業だろう。
 というのも、前回の会議の席で、クーパーがアンソニーの提出した書類に反応したことで、彼が隠している悪事が露見しそうになっているから。

 で、この写真を目にしたナオミ・ワッツはとうぜん怒り狂うけれど、ダギーの様子があまりにもおかしいのと、借金問題のせいで、なんとなくうやむやになってしまう。

 深夜、社長から押し付けられた”宿題”にクーパーが取り組んでいるとき、またも片腕の男が現れて、クーパーに向かって語りかける。
「目を覚ませ、目を覚ませ、死ぬなよ、死ぬなよ」
 それだけ言い残して、片腕の男は消える。

 調査資料の束をクーパーが見つめていると、紙の上に光の粒が浮かび上がる。クーパーはその光に沿って、鉛筆で線を引いたり、梯子や階段のような図形を書き加えていく。
 こっくりさんのような作業を延々と続けているクーパーを見せられること、約4分。単調すぎてあやうく寝落ちするところでした……。オリジナルシリーズに出てくる老ウェイターとか、リンチはキャラクターにこういう冗長な行動を取らせるのが大好き。

●マックス・フォン’s バー

 ゴードンと電話をしながら、ある場所に車で向かっているアルバート。
 外はどしゃ降り、気温は1度。電話口でアルバートを励ますゴードンだが、当の彼は自宅のリヴィングでくつろいでいて、奥さんと最上級のボルドーワインを楽しんでいるらしい。皮肉屋のアルバートでなくても、ぼやきたくなるシチュエーションだ。

 さて、アルバートがやってきたのは”マックス・フォン’s バー(Max Von’s Bar)”。
 おそらくはFBI本部のあるフィラデルフィアのどこかにある店なのだろう。入口のネオンサインが”バン・バン・バー”にそっくりなのも気になる。

 ちなみにこの”マックス・フォン’s バー”のネーミングの由来は、リンチのフェイヴァリット・ムーヴィー、ビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』に出てくるキャラクター、マックス(写真右)、そしてマックスを演じていた映画監督&俳優のエリッヒ・フォン・シュトロハイムに因んでいると思われます。

 エリッヒ・フォン・シュトロハイムは、D.W.グリフィスの片腕として、『國民の創世』『イントレランス』の制作に参加。
 のちに監督兼俳優となり、戦前から活躍した偉人のひとりだそうですが、その他にはほとんど彼について知識を持っていません。ただ、ウィキペディアを読んでいるだけで、ものすごく興味を惹かれる人物だし、なにせリンチが彼の名をもじった店を登場させたくらいなので、しっかり学んでおく必要がありそうです。

 ほかにもリンチが 『サンセット大通り』にちなんでネーミングしたキャラクターが『ツイン・ピークス』には登場します。まず、ダブル・R・ダイナーのノーマ・ジェニングス。そして劇場版でクリス・アイザックが演じていた捜査官、デズモンド。これは 『サンセット大通り』の主役であるグロリア・スワンソンの役名「ノーマ・デズモンド」を分解したもの。そして、リンチ自身が演じているゴードン・コールも、『サンセット大通り』の劇中に登場する、パラマウント映画のスタッフの名前をそのまま流用しているのです。

 さて、名前にも想いがたっぷり詰まったバーへアルバートは冷たい雨の中足を向けるのですが、そこに登場した人物もまた、相当な重要人物です。
 アルバートが混み合う店内をゆっくり歩みを進めていき、奥のカウンターに佇んでいるひとりの女性を見つけ、呼びかけます。

「ダイアン」

 そうですよ、みなさん。あのダイアンです!
 クーパーがテープレコーダーごしに呼びかけ続けていた秘書のダイアン!
 白髪のボブカット、右手には吸いかけのたばこを持った美しい女性。演じているのは、ローラ・ダーン!
 泣きましたよ、ぼくは。
 こんなものすごいシーンを用意していたからこそ、直前におそろしく退屈なシーンを長々と挟んでいたんですね……。

 もちろん新シリーズにローラ・ダーンが起用されていることは知っていましたが、まさかあのダイアンとして出すとは思いもしませんでした。
 かつてデヴィッド・リンチは自分の作品に二回以上起用した男優は自分の分身で、二回以上起用した女優はミューズなんだ、と発言していたように記憶していますが、『ブルー・ベルベット』『ワイルド・アット・ハート』、そして『インランド・エンパイア』と、ローラ・ダーンを出演させるときはすべてヒロイン級ですからね。リンチ作品のなかに、そんな扱いの女優は他に見当たりません。
 しかも、カイルとローラ・ダーンを、クーパーとダイアンとして『ツイン・ピークス』のなかに登場させるなんて、ニクすぎますよね。

 白髪といえば、オリジナルシリーズでローラの父リーランドが、たった一晩ですっかり白髪になってしまいましたし、ボブの髪も白髪です。スチルを見ると、白髪というよりプラチナブロンドって感じですが、ひょっとしたら訳あってこんな髪の色になってしまったのかもしれません。
 今回はこのワンシーンだけの登場で、しかもセリフは「ハロー、アルバート」のひと言だけでしたが、今後の展開が楽しみすぎる。

●ツイン・ピークスのどこかの製材所

 ダイアン登場の興奮も冷めやらぬなか、舞台はまたツイン・ピークスへ。
 第2話でバン・バン・バーにいたバルサザール・ゲティ演じるレッドと、第5話で同じくバン・バン・バーのシーンに出てきたリチャード・ホーンが麻薬の取引をしています。
 このやりとりもさほど重要とは思えないのに、なんと6分半も続きます。苦痛……。
 宙を浮く10セント玉、それがリチャードの口の中から出てきたり、あるいはレッドのトリッキーな動きなど、思わせぶりな要素は多々あれど、苦痛……。

 しかし、さっきのような展開もあるので、ここはグッと堪えねばね。
 次のシーンでとびきりびっくりさせられるかもしれないから……。

 ちなみに先ほど紹介した『サンセット通り』と『ツイン・ピークス』との関わりにもうひとつ触れたいのですが、ノーマ・デズモンドと執事のマックスが暮らしていた瀟洒な邸宅は、ウィリアム・O・ジェンキンスという、1920年代に大成功したビジネスマンが建てた邸宅でした。
 ただ、ジェンキンス一家がそこに住んでいたのはたった一年。あとは10年以上にわたって荒屋同然になっていたといいます。そのせいで周囲の人からは”亡霊(Phantom)”という渾名で呼ばれていたのですが、ここを1949年に購入したのが、石油王ジャン・ゲティの元妻(ただしゲティは5回結婚してるので何番目の妻かはわからない)。
 結局、1960年に建物は壊されますが、この『サンセット大通り』や、ジェームズ・ディーンの主演作『理由なき反抗』の撮影にも使われました。
 で、このドラッグディーラーの役をやっているバルサザール・ゲティこそ、ジャン・ゲティのひ孫なのです。バルサザールの父はジョン・ポール・ゲティ三世といい、ジャンの四人目の妻との子、ジョン・ポール・ゲティ・ジュニアの長男。
 ジョン・ポール・ゲティ三世は、父親の仕事の関係で幼少時代からイタリアで暮らしていたのですが、なんと16歳の時に誘拐され、1700万ドルという多額の身代金を要求されます。
 しかし、彼はもともとかなりの不良息子で、家族から狂言誘拐の可能性を疑われたうえに、ケチで有名だった祖父ジャンが身代金の肩代わりを拒否。
 その結果どうなったかというと、激昂した犯人グループによって、彼は耳をそがれ、切られた耳を家族に送りつけられてしまうのです。
 ただ、正真正銘の吝嗇家だった祖父ジャンはそんな脅迫にさえひるむことなく、犯人と交渉。290万ドルまで身代金を減額させ、孫を取り返した───と、まるで『ブルー・ベルベット』の元ネタのような事件の当事者なのです。
 1980年代前半には、ジョン・ポール・ゲティ三世も俳優として活動していたことがあり、ヴィム・ヴェンダースの『ことの次第』にも出演しています。
 また、ジョン・ポールの死因は長年のアルコール&薬物中毒の副作用による病死でした。その息子バルサザールにクレイジーなドラックディーラーの役をあてがうなんてリンチの確信犯でしょう。

●ニュー・ファット・トラウト・トレーラー・パーク

 これまた懐かしい場所が登場しました。ハリー・ディーン・スタントン演じるカール・ロッドが管理人をつとめるトレーラーパークです。劇場版で描かれた、ローラ殺人事件の端緒ともなった事件の被害者、テレサ・バンクスがここに暮らしていて、クリス・アイザック演じるチェスター捜査官が彼女のしていた緑の指輪を見つけた、あの場所です。
 カールもまた25年間、この場所で働き続けていたんだね……。
 「午前9時まで絶対起こすな」という張り紙、そしてどんな人でも一発で目を覚ます特濃コーヒー「グッドモーニングアメリカ」などなど、劇場版のなかでは短い出番でしたが、ハリー・ディーン・スタントンのインパクトは凄かったです。

 そんなカールは一日に一度、友だちの車で街まで乗せて行ってもらい、ぼんやりと時間を過ごすのが日課のようです。 
 ちなみに、このシーンに出てくるジェレミー・リントホルムという俳優が、自分の恋人をバットで撲殺しようとして逮捕されるという凶悪事件を起こして、日本でもネットニュースで配信されました。
 見出しが見出しだけに、すぐさまチェックしましたけど、日本では未放映のエピソードに出てくるチョイ役の俳優だったし、どんなふうに受け止めたらいいか、反応がとても難しかったです(苦笑)。

 ジェレミーが演じているのはトレーラーハウス住まいのホワイト・トラッシュ=ド底辺の白人男、という役だったので、キャスティング的にはストライク。
 この新シリーズでも、第1話に出てきた小屋のシーンで、異様なルックスのエキストラたちが数人出てきましたけど、多少不謹慎かもしれませんが、あっち側とこっち側の境にいるような人を目ざとく見つけて、うまくキャスティングするのがほんとうにリンチは上手ですよね。
 『イレイザー・ヘッド』以来の盟友ジャック・ナンスもひどいアルコール中毒で、喧嘩で殴打され、それが原因で亡くなってるし、『ロスト・ハイウェイ』で白塗り男を演じていたロバート・ブレイクも2001年に妻を射殺し、逮捕されています。
 まあ、この事件に関しては、被害者の女性の命が助かったのは不幸中の幸いでした。

●ダブル・R・ダイナー

 異様なキャラクターが引き続きダブル・R・ダイナーのシーンでも登場します。
 チェリーパイをこよなく愛する常連のミリアム、そして25年の時を超えて、ぽっちゃりからでっぷりへと進化したウェイトレスのハイジが話しこんでいます。もちろんあの特徴的な笑い声も健在です。
 このふたり、年齢や髪の色は違うけれど、体つきがほんとうにそっくりで親子か姉妹のよう。
 あ、新シリーズになってチェリーパイも初めてこのシーンで登場しました。とはいえ、ミリアムがすっかり平らげてしまっていて(ふた皿も!)皿の上には影も形も無く、画面には写りませんでしたが(笑)。

●ツイン・ピークスのどこか

 上物のヤクを手に入れたリチャードが車を暴走させています。ほんとうに迷惑な男です。
 取引のとき、試しに吸ったクスリの効果で、完全に目が飛んでいて、レッドに金持ちのボンボン扱いされたことについてオカンムリです。図星だったのがよっぽど腹に立ったのでしょうね。

 同じ頃、ハリー・ディーン・スタントンはテイクアウトのコーヒーを飲みながら、公園のベンチに腰掛け、葉を生い茂らせた樹々をぼんやりと眺めています。
 仲の良さそうな親子(若い母親と5、6歳の男の子)が楽しげに追いかけっこをしていて、カールの前を無邪気に通り過ぎるのですが、いつもは仏頂面の彼の顔に優しい笑みが浮かびました。

 しかし、公園に面した交差点で何台かの車が信号待ちをしていると、リチャードの車(真っ黒な旧式のフォードのピックアップトラック)が猛スピードでやってきたのです。
 彼は停車中の車の横をすり抜け、信号無視で交差点へ突っ込みます。
 すると運悪く、さっきの小さな子どもが横断歩道を渡っているところで、止まっている車の影から顔を出した瞬間、対向車線を走ってきたリチャードのトラックに跳ね飛ばされる!

 トラックはそのまま走り去り、交差点の真ん中には血だらけの男の子が、糸の切れたパペットのように横たわっています。
 母親が断末魔の叫びを上げてわが子に駆け寄り、体を急いで抱きおこすけれど、彼が即死したことは誰の目にもあきらかでした。

 叫び声を聞きつけ、ハリー・ディーン・スタントンもそこへやってきます。彼の目には男の子の体から魂(黄色い光)が抜け出て、空へと高く登っていくところが見えます。
 それを見届けたあと、ハリー・ディーンは泣いている母親のもとへ歩み寄り、肩に手を置いて、彼女を慰めるように無言でじっと見つめます(この一連のシーン、ほんと最高)。
 
 くしくもこの交差点は劇場版に出てきた。手押し車を押しながら、ノロノロと横断歩道を渡る老人のせいで、何台かの車が立ち往生しているところや、カメラアングルなど、このシーン全体がまるで焼き直しのように撮影されている。劇場版ではオープンカーに乗ったリーランド&ローラと、キャンピングカーに乗った片腕の男が遭遇するシーンだった。
 交差点の傍らに立っている古い木製の電柱が意味深にアップとなり、電線や変圧器から「ジジジジッ」という不吉な音が微かに鳴っている。この電柱と電線はすべてを見てきたのだ、というように。

 逃走していくリチャードと、ダブル・Rを出たミリアムの目が一瞬合います。彼女にも悪いことが起こらなければいいんですが……。

●ダンカン・トッドのオフィス

 ラスベガスのどこかにあるモダンなオフィスで、ダンカン・トッドがThink Padでメールを打っている。
 すると、画面に赤い正方形がぼんやりと現れます。
 なにかの合図だったのか、彼は背後にある金庫のなかから大きな封筒を丁重に取り出します。封筒の中になにが入っているかはわからない。

●ランチョ・ローサ・エステイト

 警察による検証作業がダギーの車が爆発した現場で進んでいる。
 目の前の家の屋根の上で、ナンバープレートが見つかった。大破した車がダギーの持ち物だということもすぐ判明するだろう。

●どこかのモーテル

 眼光鋭いスキンヘッドの小人がモーテルの部屋にいる。そこへ部屋の外からドアに封筒が差し込まれる。差出人はおそらくダンカン・トッドだろう。
 小人が封筒を開けると、中から出てきたのはA4くらいのサイズの写真2枚。
 1枚には前回出てきたロレーン(ご丁寧にロレーンの写真が映った瞬間、またBluntedbeatzの” I Am (Oldschool HipHop Beat)”が鳴る!)、もう1枚にはダギーの姿が写っていた。
 小人はデスクの上に置いてあったアイスピックを手に持ち、ロレーンとダギーの顔面に力いっぱい突き立てる。

●ラッキー7・インシュランス

 ダギー(クーパー)が書類の束を抱えながら、出社してくる。なぜか満面の笑みで。
 今日のダギーはトレードマークであるうぐいす色のスーツではなく、FBI仕様のブラックスーツを着込んでいる。片腕の男の叫びが届いて、捜査官としてのアイデンティティを徐々に取り戻しているのだろうか?。
 社長がすぐにダギーを自分のオフィスへ呼び込む。
 同僚のアンソニーは落ち着かない様子。彼が行なったなにかしらの不正行為が、金色の光の粒の導きによって暴かれたに違いない。

 このアンソニーを演じている役者にも見覚えがあった。『プライベート・ライアン』で、トム・ハンクスが最も信頼を寄せていた兵士ホーヴァスを演じていたトム・サイズモアだ。
 『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『ブラックホークダウン』などの作品にも端役で多数出演している。imdbにカウントされてる出演作は実に204本(笑)。日本で言えば、遠藤憲一とか寺島進とか、そんなタイプの役者なんだろう。

 で、最初、社長はクーパーの落書きを見て、ただただ呆れている。
 しかし、なにか引っかかるものがあって、もう一度彼は書類をよく見直してみる。
 すると、クーパーが落書きで示した”秘密”に気がつく。
 社長はダギーに感謝して、握手を求める。
 ただ、視聴者であるぼくらにはクーパーが落書きで示した秘密がなんだったのか、まるでわからない。

 それと社長室の壁に、あるボクサーのポスターが貼ってある。
 クーパーはそれに見惚れて、思わずファイティングポーズを取る。
 そのボクサーの名はBushnell Mullins。調べてみると、これは若き日の社長みたいだ。何かの暗示/伏線かもしれないけど、現時点ではこれも意味がわからない。

●グイネヴィア通りとマーリン通りの角の公園

 ナオミ・ワッツが白昼の公園で借金取りと待ち合わせをしている。
 昨夜、浮気写真の件ですったもんだしているとき(もちろんクーパーはなにも反応しない、ただ一方的に彼女が激怒していただけだ)に、彼らから借金の返済を催促する電話がかかってきた。
 まったく使い物にならないダギーに変わって、彼女が金を受け渡す約束をしたのだ。

 彼らとの交渉の結果、利子込みで5万2000ドルもあった借金(フットボール賭博)を、半値以下の2万5000ドルまで値切ることに成功する。
 この借金をねぎって減額されるというエピソードは、さっき書いたジョン・ポール・ゲティ三世誘拐事件をちょっと思い出しますね。まあ、実際のところ、交渉なんて穏便な方法じゃなく、ナオミ・ワッツがあまりにものすごい剣幕でまくし立てるから、借金取りたちがビビって、有無を言う隙が無かったんだけど(笑)。
 

●ロレインのオフィス

 ロレインが誰かと電話していると、壁の向こうから女の悲鳴が聞こえる(BGMはもちろんBluntedbeatz)。
 さっきの小人がアイスピック片手に小走りで彼女の部屋へ駆け込んでくる。
 部屋の隅に追い詰められたロレインは、心臓のあたりに何度も何度もアイスピックを突き立てられる(刺した手を執拗にグリグリする)。
 あっという間に血まみれになって、彼女は絶命する。
 よせばいいのにドアの前に立って、彼女が襲っているところを観察している中年の女がいる。返す刀で小人は彼女を襲う。
 激しい物音と悲鳴が廊下の奥から聞こえ、それが止むと、全身返り血だらけになった小人がふたたび姿をあらわす。右手に持っていたアイスピックは直角に折れ曲がってしまっている。

 ということで、この小人が狙うのはダギーの命、ということになるのだろう。
 借金問題はいちおう片付いたけれど、ダンカン・トッドがなぜダギーを狙っているのか、そのへんはまだはっきりしていない。
 また、ダギーに目をつけているシルバー・ムスタング・カジノの連中も黙っているとは思えない。

●ツイン・ピークスのどこかの森

 リチャード・ホーンの乗ったトラックがやって来る。
 悪態をつきながら、ペットボトルの水をバンパーやフロント部分にかけ、さっきのひき逃げでついた血をタオルで手早く拭き取る。

●ツイン・ピークス保安官事務所

 ホークがオフィスのトイレで手を洗っている。紙タオルで手を拭き、小銭入れのようなものをズボンのポケットから取り出そうとした瞬間、一枚の硬貨がこぼれ出て、床に転がる。
 拾い上げてみると、それはネイティブ・アメリカンの横顔が彫られた硬貨(おそらく5セント玉)だった。彼は何かを感じ取り、周囲を見回すと、トイレの個室のドアに金属製のプレート(メーカー名:NEZ PERCE MANUFACTURING)がついていて、ネイティブ・アメリカンの横顔がロゴマークとして彫り込まれているのだった。
 ホークはドアにこじ開けられたような隙間があることを発見して、バールのようなもので分解しはじめる。

 そのとき用を足そうと、保安官助手のチャド(前回のラスト近く、バン・バン・バーでリチャードと金のやりとりをしていたのもこの男だった)がトイレにやってくる。しかし彼はチャドを追い出し、ドアの中を探し続ける。
 そしてついに手紙を発見! これがきっと丸太の予言した「クーパーを探す手がかり」にちがいない。

●保安官事務所内の指令室

 フランクが部下に指示を出していると、ヒステリックな嫁のドリスがまたも怒鳴り込んで来る。
 チャドは彼らのやりとりを見て、キツい皮肉を口にするが、オペレーターの女性がそれをたしなめる。
 彼女が言うには、フランクの息子は元兵士で、PTSDを発症して自殺。それ以来、ドリスの性格は一変してしまったのだそうだ。
 そんな話を聞いても、チャドは死んだ息子のことも嘲笑する。なんてクズ野郎なんだ……。

●バン・バン・バー

 恒例の歌のゲスト、今回は日本でも人気のシャロン・ヴァン・エッテンが登場しました。

 シャロン・ヴァン・エッテンは2009年にデビューしたニュージャージー出身のシンガーソングライター。日本にも2010年と2015年の二回来日しています。
 曲は2014年発表のアルバム『Are We There』に収録されている「Tarifa」。シンプルで力強いメロディを持つ、スケールの大きなカントリーバラードですね。
 『ツイン・ピークス』の世界観とよくマッチしているし、今回は特に凄惨なシーンが多かったから、彼女の歌声でほんとうに救われた気分になったなぁ。
 


 笑いの基本的概念は緊張の緩和……と言いますが、リンチ作品の魅力は<極度の緊張と極度の緩和>、およびその振り幅の大きさだと思っています。
 怖いけど笑えるし、笑えるけど怖い。ギリギリまで緊張させておいて、緩める。不安にさせて、安心させる───人を笑わせるのと同じやり方でリンチはぼくたちの心をあらゆる方向にざわつかせます。

 赤い部屋の逆回し演出なんかもそうですが、役者たちが実際はこんなふうに演じているかと思えば、本当に滑稽なんだけど、それを反転させると、どこか不安定で緊張感のある映像に変貌する。
 リンチは複雑な映像トリックを好みません。映画がまだ見世物小屋の演し物のひとつだったような時代からある、きわめて単純な手法を好んで使用します。
 映像だけでなく、雑音/効果音といった非音楽的なサウンドも、またリンチの重要な武器です。
 カメラではけっして映し取れない、透明な”精霊”の存在を、彼はそういった音をつかって表現します。

 第6話は、新シリーズのエピソードの中でも、屈指の”緊張と緩和”の連続でした。観ることに多大なエネルギー消費を強いられ、そのせいか、1時間経つのがあっという間でした。
 番組のラストに出てくる「バン・バン・バー」は、毎回エピソード全体の”緩和”の場になっているので、演奏シーンが始まると心からホッとしますが、今回ほど嬉しかったことはなかった(笑)。