何度も不死鳥のように蘇る不定期連載「ピーナッツ・レコードの穴」 VOL.14のお題は「渋谷系」です。同じ二人組でもフリッパーズギターよりもHARVARDのほうが好きなくらいなので、あまりマニアックなことは書けませんが、よければお付き合いください。

1999年の2月TRASHCAN SINATRASの福岡での来日ライブを観る前に、いつものようにJUNGLE EXOTICAで新譜のレコードをチェックしていました。するとそこに、その頃メジャーデビューし飛ぶ鳥を落とす勢いのNORTHERN BRIGHTの3人がやってきました。サニーデイサービスとともにトラキャンのフロントアクトだったので、空いた時間にレコード屋をのぞいていたようです。3人で楽しそうに会話をしながらレコードを選んでいる姿を見たら、それまでイケメンの上にバンドまでやって女の子にキャーキャー言われやがって、と、やっかんでいたのも忘れて、一気に親近感が湧きました。

メンバーの新井仁さんと原”GEN”秀樹さんとは、その後イベントなどで何度か会う機会があり、この時の話をして「OCEAN COLOUR SCENEのLPを買ってましたよ」と言うと、「やっぱりわかりやすいの買ってるよね」と笑っていました。新井さんは自身のバンドやソロ活動はもちろん、近年はLIFESTYLE MUSIC RECORDSというレーベルを立ち上げ、鹿児島のTHE ACOUSTICSや北海道の GOOD DEK をリリースし若手をフックアップしています。カジヒデキはじめ多くのミュージシャンから引っ張りだこの渋谷系ドラマーのGENさんは、ちょくちょくPEANUTS RECORDSで通販をしてくれます。しかも、僕が「これ最高なんだけど、知名度低いからなかなか売れないだろうな」なんて思っていたのに限ってGENさんが抜いてくれます。次に会った時に「あれ良かったよ」と言ってくれるのですが、その笑顔はJUNGLE EXOTICAで見かけたあの時のままです。

トラキャンのライブから少しして、僕も上京し、本当に渋谷のレコード屋さんに足を運ぶようになります。2001年の初頭にZESTでレコードを見ていると、GREAT 3の片寄明人さんがやってきて、スタッフの梶本聡さんと雑談をはじめました。ジョン・マッケンタイアがプロデュースしてシカゴ録音した『MAY AND DECEMBER』のリリース前だったので、レコーディングの様子などを楽しそうに話していました。「ジョンは意外とフリーソウルみたいなのも好きなんだよ」とか「逆にエレクトロニカとかポストロックはあんまり興味ないみたいで、リミックスの12インチとか、それ持って帰っていいよって言ってくれる」など、聞こえてくる断片がとても貴重で、これだけで東京に住む恩恵を十分に受けたと思ったものです。ただ、このあとに行ったMAXIMUM JOYで薄田育宏さんにも同じ話をしているのに遭遇してしまい「その話、オレもう聞いたよ!」と心の中でツッコんでしまいました。

去年、ある先輩とさし飲みした時に、「だから、結局、渋谷系は自分のことより音楽やレコードのほうが好きなミュージシャンのムーブメントだったんだよ」と泥酔して叫ぶので、僕は「はいはい、わかりました」といなしたのですが、上の2つのエピソードを思い出し、それも一理あるな、と。

自分より音楽が好き、なミュージシャンと言えばORIGINAL LOVEも外せません。93年のサードアルバム『EYES』収録の「LET’S GO」にはとても思い入れがあります。

 

90年代には中洲のホテルの地下にクロッシングホールという箱があり、そこでたくさんのDJやライブを観ました。UFOやSILENT POETS、ジャズ時代の竹村延和などもよくDJをしていて、大学に入りたての僕らも背伸びをして遊びにいったものです。松浦俊夫が、リリースしたばかりのJAMIROQUAIの『REVOLUTION 1993』から『LET’S GO』に繋いだ時には満員のフロアが地鳴りかと思うくらいの絶叫とともに盛り上がり、みんなが両手を上げて狂ったように踊っていました。クラブでこれ以上の盛り上がりを見たことはまだありません。だから『LET’S GO』の12インチのコメントには「クラブ・ジャズ黎明期にはJAMIROQUAI”REVOLUTION 1993″などと並びフロアを沸かせたクラシック中のクラシック」と書いています。

その『LET’S GO』の12インチは持っていたので、去年リリースされたFREE SOULの7インチボックスは慌てなくてもいいかなと思っていたら、8000円近くするボックス800個があっという間に無くなりました。無くなったら欲しくなるのが人の常。ご来店いただいたお客さんに「ORIGINAL LOVEのボックス買えました?」なんて尋ねていたら、常連の山口さんが「あ、ぼく未開封持ってますけど、譲りましょうか?」と言ってくれました。熊本市内のTSUTAYAに1セットだけ入荷していたそうで、その限定ナンバーが555だったので、縁起がよさそうで思わず買った、とのこと。是非譲ってください、と言うと「じゃ、7000円でどうですか?」と予想外の返答。「いやいやいや、プレミアついているのに、定価でも申し訳ないくらいですよ」と言うと、「じゃ、取ってきますね」と家までわざわざ取りに行ってくれた上に、お支払いした金額以上にうちで買いものをしてくれました。こんな優しいお客さんのおかげで当店もなんとか生き残れております。

あらためてレコードで聴くORIGINAL LOVEは素晴らしく、続く初期4枚のLP化は絶対に逃せないと、発売後すぐに手にいれました。中でも、リリース当時はあまり印象になかったセカンド『結晶 SOUL LIBERATION』収録の「スクランブル」のめくるめく感にやられ、DJするときには必ずレコードバッグの中にいれています。

 

昨年11月のヒゲの未亡人の熊本でのライブの開演前のDJの時にも回したら、常盤響さんがブースに近づき「井手さんのDJアガる」と声をかけてくれました。「この曲7インチボックスにも入ってなかったからLP嬉しいよね」と言われるので「いやホント、どれも傑作で、これ1年に1枚出していたって信じられないし、逆によく死ななかったな、って思いますよね」と僕がいうと「ホントそうだし、若いうちは勢いで出せるとこまで出さなきゃいけないんだよね。その点、小山田はちょっとサボったかな」と笑いながら言われて、仲の良い常盤さんだから言える冗談だけど、僕はブースで鳥肌が立ちました。

僕の渋谷系エピソードはこんなところですが、5月20日(土)の「ぼくのシブヤ景 in 熊本 1988-2004」ではもっとマニアックで、面白くて、ためになる話を聞かせてくれるかな?

ORIGINAL LOVE / LET’S GO! [12″]
クラシック中のクラシック!!!

NORTHERN BRIGHT / PULP ELAVOUR [12″]
ジャケからも音楽愛が!

ana

Keigo Ide

Keigo Ide

昭和48年6月27日、熊本生まれ熊本育ちのO型。
中古レコード店"PEANUTS RECORDS"オーナー。いろいろな音楽が好きですが、最近は一回りしてまたギターポップばかり聴いています。子煩悩。スニーカー好き。
Keigo Ide