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 今やすっかり全国区になった、われらの常備酒、芋焼酎。
 もう何年も前「東京で芋焼酎がブーム!!」なんてよく見聞きしたときには、正直、ピンと来ませんでした。
 だって田舎じゃ「東京で大人気!!」「表参道○○○」とかいう胡散臭いフレーズが、日々僕らをたぶらかそうと絶えず飛び交ってるから。
 だからその時も「またいいかげんなことを……」ぐらいに思ってました。昔から続くそういうイタチごっこのせいで、僕には「東京」「銀座」「新宿」等々が付いたものには、まずは用心する癖がすっかり沁み付いてしまったのです。
 それがどうしたことか、ここ数年、鹿児島にやって来る県外の人たちの詳しいこと詳しいこと。
 聞いたことの無い銘柄、酒造会社の名前、仕込み方、芋の種類……まるでソムリエの如く、次から次に飛び出すもんだから、地元の僕のほうがその豊富な知識に圧倒されるほど。

 僕も<日本酒=米>ぐらいの認識しか持ち合わせていないことを思えば、県外の人は焼酎のことを本当によくご存知なんです。そういうことが何度かあって、芋焼酎って本当に知られてるんだな、全国区なんだな……という事実をはじめて実感しました。
junman4 そうなると厄介なのは「あなたのような生粋の薩摩隼人なら、もちろん地元ならではのマル秘情報をひとつやふたつ持ってるでしょう?」って、期待される時。
「好きな焼酎、何ですか?」キラッキラした瞳で訊かれると誠に申し訳ないのですが、近頃は「───あ、僕は出されたのを飲みます」と、素直に白状することにしています。
 このぼくの回答に案の定、ちょっぴり空気が張り詰めます。このままだと友好と親善に亀裂が生じかねないので、一応、弁解を付け加えることにします。

 僕の芋焼酎との付き合い方は、焼酎が大好きで、晩酌を欠かさなかった祖父の影響があります。
 いつもどこでも、何も言わずお湯割り。その姿を見て、たとえ好き嫌いがあっても、あれこれ言わずそこで出されたものを黙って飲む。そういうのが焼酎の飲み方なんだと咀嚼しました。
 実際、あれだけ焼酎を愛してやまなかった祖父なのに、それについて何か語ったことは一度もありませんでした。僕にはその姿が潔くて、やけにカッコよく映りました。僕もいつか焼酎を飲む時が来たらあんなふうに飲もう、と。

 なにかをマニアックに追い求めるロマン。素敵だし、尊敬します。でも、それと真逆な付き合い方も悪くないです。
 だから僕らの自販機で芋焼酎を出す時は、あえて銘柄を明記せず<普通の焼酎>と表記するつもり。
 酒類を扱うのは、昨今とってもデリケートな自販機。なので、年齢確認は「指紋認証システム」と称し、自販機の中に手を入れてもらって、成年・未成年の判断は目視で判断します。でも永年「仕事」をしてきた職人のような掌をしたチビッ子とか来ちゃったりしたら……。認証に支障をきたしそうで困るなぁ。

Suzunone Jun

Suzunone Jun

東洋のナポリ・鹿児島生まれ。同地でエスプレッソやコーヒーの抽出活動を行う鈴の音抽出所の所員。
http://instagram.com/suzunone_jun/
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