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 長らく更新をお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした。実は某出版社から急遽依頼された仕事でチベットへ行くことが決まり、約三週間ほど滞在してきたのです。いやあ、ひどい目に遭いましたよ、チベットでは。なんと到着した初日に全財産……カメラ、パスポート、現金、携帯電話など、一切合切が入った大事なポーチを置き引きされましてね。慌てて警察へ駆け込んだのですが、言葉はまったく通じず。なんとか事情を説明しようとボディ・ランゲージをしたところで逆に不審者扱い。ワケも分からず署内の中をあちこち引っ張りまわされました。これがホントのダライラマワシ───なんつって。
 どうでしたか、小生のチベットリアン・ジョークは?
 いやはや、こんな下手くそな冗談が言いたくなったのは、われらが冗談伯爵のせいかもしれません。そんなわけで、このロング・インタビューもとうとう完結編です。遂に話題は彼らの音楽の核心───すなわち”やわらかロック”とはなんぞや? という部分に迫ります。生まれてきた時代を間違ったとしか思えない、ほとばしるマグマのようなメッセージをお聞きください。

インタビュー&構成:鼠忠一郎

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───お二方が標榜していらっしゃる”やわらかロック”とはいったい何なのか、そこをズバリお聞きしたい。
前園「ついに来ましたね、その質問が」
新井「んむふふふふん」
前園「では、鼠さん。逆にあなたにお伺いしたい。”やわらかロック”とはいったいなんなのか、と」
新井「まずはご意見を頂戴したいのよ」
───いや、それがよくわからないから率直にお伺いしたのです。
新井「おやおや、お得意のお色気忍法ですかな、鼠さん」
前園「(笑)そうですよ、ねず奴さん。いくらあなたがかつて伊香保の温泉芸者として名を馳せた御仁だからといって、ぼくたちは誤魔化せるとは思わないでくださいね」
───忍法とか芸者とか……なにをお二人が仰ってるのか。
新井「そうはスクイーズのゴールデンボール!」
前園「メイクミラクルは恋のナックルボール!」
新井&前園「セカンドオピニオン、ダルビッシュ右肘手術! イエ〜イ!(ハイファイヴからのグータッチ)」
───ううっ……。
前園「もうお分かりでしょう、鼠さん」
───いったいぜんたいなんのことでしょう?
新井「もったいぶっちゃってコノコノ〜〜!」
───すいません。わたしはどういうことかさっぱり。
前園「鼠さん、お誕生日おめでとうございまーーす!」
(新井、雑然と積まれたダンボールの山の中から愛器オーバーハイムOB-Xを引っ張りだし、やおら『ハッピー・バースディ』を弾き始める)
前園「ハ〜ッピバ〜スデイトゥユ〜〜、鼠さ〜〜ん♪」
(どこからともなく三十人以上の冗談ファミリーが現れて大合唱)
全員「ハ〜ッピバ〜スデイトゥユ〜〜!」
───いや! あのっ!
新井「あははは、なにそのびっくりした顔(笑)」
前園「鼠が毒饅頭食べたような顔してますね」
新井「ほら、我々が二人で手づくりした砂糖も小麦粉も一切使っていない、特製ましゅまろケーキもご用意してますよ」
───あ、あの、ご好意はとってもありがたいんですけど、わたしの誕生日は五月です。まだ三ヶ月も先なんですよ。
前園・新井「………」
───どこでどうお間違えになったのかわかりませんが、とにかくそういうことなのです。

(前園&新井両氏、そして冗談ファミリーがケーキやシンセサイザーを渋々片付けるのを五分ほど待つ)

───それでは気を取り直して、インタビューを続けさせていただきます。
新井「(露骨に不満そうな表情で)はいはい、答えりゃいいんでしょ」
前園「(散骨に不安そうな表情で)なんの話だったっけ」
───お二方の考える”やわらかロック”の定義とは? という質問です。
新井「まあ、柔らかかろうが固かろうが、実際のところ俺たちの音楽なんて評論家にはとにかく評判悪いよね」
前園「いやレコードはぶっちゃけ売れてますよ、そりゃ。なにしろ今、冗談伯爵を聴くことがヤングのあいだじゃ大きなトレンドになってますから」
新井「でも、やっぱり……自分たちだって、まだまだつまんない。要するに俺らが求めるやわらかさになってないんだよな」
前園「一朝一夕じゃ、なかなかやわらかいロックはできないですよ。今リリースしてるシングルもね、芯のところに髪の毛一本分の固さが残ってる」
───いわゆるアル・デンテ、ですか。
新井「どの曲にどのくらいの固さが残っているか、せめて自分たちは正直に認めていかないと次の音楽ができなくなる」
前園「ハッキリしてることはもう昔のぼくたちには戻れないわけですよ。スープ・ロック(第二回参照)やスナックでバイト(第三回参照)してた頃には。ぼくなんかよく聞かれるんだけどね。『昔みたいなアレ作んないんすか?』みたいな。どこをどう間違ったのか『ケアレス・ウィスパーみたいな曲はもう作んないんですか?』とかね(笑)。ズケズケ聞く奴がいるんですよ」
新井「昔はもっと面白かったのに、とかね。持ってたカウベルで脳天カチ割ってやりましたけど(笑)」
前園「ぼくたちのファンなんてどこにもいないんだ、とことん信じられる人間なんてどこにもいないんだ、ってところからスタートしてますから。生まれたそばから人間不信ですよ。バンドもコミューンも結局そこが原点なのかも」
───なるほど。しかし、一方で若者たちにはセルフィー自撮り棒か、冗談伯爵か……とまで求められている。
前園「鹿児島出身のぼくとしては地鶏と比べられるなんて光栄ですよ(筆者注:もちろんお気づきかと思うが、前園の”トリ”違えである)」
新井「実際んとこ良い曲は書けてるのよ。だからほんとさ、今後、評論家がナメた口きいたら、片っ端からぶん殴ってやろうかと思ってます(笑)」
前園「ぼくたちを支持してくれてるヤングのなかにも、じきに『オレはもう冗談伯爵から卒業したんだよね』なんて言う人がきっと出てくるよね」
新井「ほかにも『ありゃガキの音楽だ』とかね。あんたらに卒業されるほどダサい音楽やってないよ、って声を大にして言いたい」
───お怒りはごもっともです。では最後に今後の冗談伯爵についてひと言ずつ豊富をお聞かせください。
新井「一曲に3つ以上コードを使う!」
前園「アラスカでオーロラが見たい!」
───本日は長い時間ありがとうございました。

完。

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ブラックジョークと誕生日をサプライズで祝うのが上手な冗談伯爵。いよいよ七吋シングル連続リリースの最後を飾る『いつかどこかで / 幽霊のバラード』は三月二十五日発売。
また第一弾『bird man / 雨上がり』はこちら、第二弾『LED / 渚』もこちらで絶賛発売中です。

Chuichiro Nezumi

Chuichiro Nezumi

東福岡経済大学第三文学部中退。1981年、北海道の地下格闘技興行に潜入取材した『麦と革ベルト』で中央論壇賞を受賞。以降、音楽、風俗、経済、ギャンブルなどさまざまなジャンルへの体当たりルポで日本ペン界にこの人ありと言われている。
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