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 冗談伯爵の音作りの要である新井俊也。普段から寡黙な彼の肉声を聞くことは公の場では特に難しい。その理由はひどい上州訛りだと噂に聞いていた。わたし自身、このインタビューを引き受けるにあたってもっとも懸念したのが、新井から活きた言葉を引き出すことだった。
 しかし、彼らの本拠地であるましゅまろ村では、むしろ冗談好きのおしゃべりな人間だと思われている───と村の住人たちから聞いて、小生は驚いた。新井は訛りこそすれ気の良い群馬のアンちゃんという感じだ。ましゅまろ村では音楽制作の傍らに、住居などの建設から電気や水道、ガスといったライフラインの整備(もちろん敷設は違法だ)まで一切を引き受け、機械油まみれで作業に明け暮れている。むしろこんなアッケラカンとした人間が冗談伯爵のように繊細な音楽を作っていることが面白くて仕方ない。
 そんな新井はインタビュー中にこちらが尋ねないことまであけっぴろげに答えてくれた(そのほとんどが下半身に関するジョークだったのでここでは割愛せざるを得なかったが)。趣味はバイクいじり、好きな映画は『ゴッドファーザー パート2』という新井の言葉を中心に今回は構成してみよう。

インタビュー&構成:鼠忠一郎

KazariLine

───新井さんはこれまであまりにもメディアの露出が少なかったと思います。ほとんどまともなインタビューというのもありませんね。
新井「オレの言葉なんて誰も気に留めてねえっしょ(笑)」
───いやいや、それがあなたの神秘性を高めていたし、わたしの周りでもあなたのことを知りたいという声がとても多かった。
新井「神秘性というより信ぴょう性の問題なんじゃねえの?(笑) でもさ、たしかに一部じゃアライという人間がほんとうに実在するのか……なんてコトを真顔で言ってるやつもいるらしいよ。そんなイエティじゃねえんだから(笑)」
前園「ぼくがそのトバっちりを一番受けてますよ。ファンに質問されることもよくありますし。こないだも『新井さんってほんとは○○(某有名DJ)なんでしょ?』とか(苦笑)」
───実際の新井さんはどんな人間?
新井「最近よく”ネクラ”なんて言葉を聞くけど、オレなんてまさにネクラだよね。オレは暗いほうが好きなとこあんのよ。今の世の中は悪いナンパが多いよね。そーいう連中がネクラなんて言い方を流行らせたりしてるんじゃない?」
───はあ。
新井「音楽でも映画でも芸術なんかでもさ、実際ナンパなわけよ、オレから言わせると。一見、すごくうまいわけ。でもさ、シン食ってるようなとこがないんだよね。ゾノなんかは髪なんか伸ばしてチャラついてるように見えるけど、ちゃんとシン食ってるよ。冗談伯爵を組む前は街なんか歩いてるとけっこうオンナなんかこいつがチョロチョロ引っ掛けたりしてたんだけど」
前園「ちゃんとそっちにも回してただろ(笑)」
新井「まあ、それについてはマジ感謝(笑)。ただ、ゾノはひとりになるとけっこう電灯の下でハードな考え事をしたりしてるから。『お米はどうして白いんだろう』とか『地球はなんでグルグル回ってんだろう』とか『人間は死んだらどうなるか』とかね。オレはそういうところも知ってっから。こいつのことはワリに信用してますよ」
───なるほど、お互いよきパートナーだ。
新井「尊敬する人ってみんないろいろいると思うんだけどさ、そーゆう尊敬する人って自分よりデカい人間じゃなきゃダメみたいな考え方、あるよね。最近オレ『立って半畳、寝て一畳』ってことわざを覚えたんすよ」
前園「どこで教わったの?」
新井「実家の便所に貼ってあったカレンダーなんすけど(笑)。要するに人間の大きさは座って半畳分、寝っ転がっても一畳分くらいしかないって意味だって母ちゃんから聞いて、シンプルに感動したんすよ。オレのいちばん尊敬する人間ってキース・リチャーズなんすけど、それまでは過大評価っつうか、キースなんて寝ると百畳分くらいの人間だって思ってたんで、それこそ九十九畳分もその差を埋めるのは一生かかっても無理だワ!って諦めてたんすよ。でもその言葉を知ってからは『ああ〜、キースだって所詮、寝て一畳分の人間なんだよな』って思って」
前園「良いこと言うなあ」
新井「だから近いうちにオレたち冗談伯爵もストーンズを追い越せるバンドになれんじゃねえかな、って……」
───じつに頼もしいですね。
新井「ロックってやっぱホンモノの音楽って感じするじゃないっすか。やっぱホンモノはホンモノを好むんすよね。キースなんてマジホンモノじゃないっすか」
───たしかに。ほかにホンモノというと?
新井「そうっすねえ……日本人ならビートたけしっすかね。あいつはけっこうロックしてるって思いますよ。服なんか、いっつも三宅一生とか着てるけど、あれは皮肉って着てるんだと思うんすよ(笑)。ロックって皮肉が大事じゃないっすか。大事なのはやっぱ毒ガスなんすよ(笑)。こいつの歌詞なんてソートー毒ガスですよ。たっぷり皮肉ってますよ、世の中を」
前園「そうかなあ……」
新井「世間のフーチョウや政治家センセイをこきおろし、オバタリアンをこきおろし、シティボーイにニギリっぺ。いや、マジでゾノはほんとシブい歌詞書いてますよ。おまえらにオレたちの超一流の皮肉がわかったら、おまえらもロックになれるよ、って。そんなこと思いながら真剣に音楽やってるよね」
───そんな硬派な冗談伯爵は女の子には見向きもしない?
新井「バンドなんかやったらモテてモテて芸能人と付き合えちゃったりするのかと思ったらカラッキシっすね。それなら前にスナックでバイトしてた時のほうが女には困らなかったっすよ(苦笑)。まあ、今に見てろよって思ってますけどね。おいフライデー、首洗って待ってろよ、って(笑)」

続く。

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モテてモテて困ってる冗談伯爵の七吋シングル第一弾『bird man / 雨上がり』はこちらで絶賛発売中。
また七吋シングル第二弾『LED / 渚』はいよいよ二月二十五日発売です。

Chuichiro Nezumi

Chuichiro Nezumi

東福岡経済大学第三文学部中退。1981年、北海道の地下格闘技興行に潜入取材した『麦と革ベルト』で中央論壇賞を受賞。以降、音楽、風俗、経済、ギャンブルなどさまざまなジャンルへの体当たりルポで日本ペン界にこの人ありと言われている。
Chuichiro Nezumi