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 冗談伯爵が活動開始する以前、前園直樹はステージ上にところ狭しと並べられた鉄クズをハンマーで叩き、ガラス瓶を粉々に破壊し、寸胴で鶏ガラや香味野菜を一昼夜かけて煮こむという衝撃的なパフォーマンスで名を馳せた。海外の音楽メディアには”スープ・ロックの鬼才”と紹介されたが、初のイギリス公演では舞台で牛一頭を解体し、無料で客にフルコースを振る舞うことで、スープ目当ての観客の度肝を抜いた(その時のステージ写真には見事に解体された牛肉とともに、散乱する野菜くず、無数の調味料、そしてきちんと分別されたゴミなどが写されている)。
 今でこそ蒼井優のような穏やかな笑顔を浮かべてわたしの前に座っている前園だが、きっと彼の心中にはあの頃のような、ほとんど病的ともいえる激しい音楽的衝動が息づいているのに違いない。そこで主に今回はフロントマン前園の”原点”に迫ってみた───。

インタビュー&構成:鼠忠一郎

KazariLine

───意気投合されたおふたりが冗談伯爵を結成されるいきさつについて、もう少し詳しくお聞かせください。
前園(以下、ゾノ)「お互い生まれたままの姿を見ていたわけなので、今さら深く語る必要は無かったですよね」
新井(以下、ヒデ)「どこにどんなホクロがあるのかもわかっています」
ゾノ「ウフフ」
ヒデ「ウフフフ」
───とはいいましても、お二人がそれぞれに音楽をやってきた方だというところまではわからないですよね。
ゾノ「いえ、見るべき人が見ればわかるものなんですよ」
ヒデ「そうですね、肉付きが違います」
ゾノ「彼の場合は腰からお尻にかけてのラインがムッチリしているでしょう」
───はあ、そう言われればそうですね。
ゾノ「これは長年イスに座りっぱなしでひたすら音楽をプログラミングすることでしかつかない、程よいサシなんです」
ヒデ「そうなんです。贅肉ではなくサシです。反対に彼なんかはアオビョウタンのようにヒョロヒョロしてると思われがちでしょうが、まさかまさか」
ゾノ「照れるね(笑)」
ヒデ「ついこないだの話ですが、ぼくが打ち込みをしてる時にふと顔を上げると、裸にエプロン姿で床をほうきがけしている彼の後ろ姿が見えたんですよ。まるでアフリカの大地を悠然と歩くインパラのように優雅ですよ。思わず手が止まりましたね。さすがは世界と戦ってきた男だな、と。あれはいつ見てもうっとりします」
───ただならぬ運命によって冗談伯爵を結成されたんですね。
ゾノ「まさに。じつは二人で喫茶店に行く日の前夜、髪のお告げがあったんです」
ヒデ「アハハ。ぼくはそういう迷信を信じない人なので、この話はゾノにお任せします(笑)」
ゾノ「今でこそ地面につくほど髪の毛が長いんですけど、生まれたときは短かったんですよ」
───だれでもそうだと思いますが……。
ゾノ「それがみるみるうちに伸びていきまして。幼稚園の頃はオカッパだったんですけど、その時のアダ名はなんだったと思います?」
───またクイズですか。うーん、ありきたりですが、ワカメちゃんとか?
ゾノ「…………話題を変えましょう」
───正解したんでしょうか?
ヒデ「ぼくの幼稚園の頃のアダ名は悪魔でした」
───なにがあったんですか?
ゾノ「で、中学生の頃には腰まで伸びてまして」
───すいません、話についていけないのですこし整理していただけますか?
ゾノ「辮髪で学校へ行っていたのでアダ名は……」
───ラーメンマン?
ヒデ「ブッブー、違います。答えは……」
ゾノ「ベンパツです」
───そのままですね。
ヒデ「モチのロン校則違反だったんでしょ?」
ゾノ「そうです。ですから校門のところで毎日停められましてね。風紀委員や生徒指導の教師たちから『ベンパツやめろ!』『ベンパツ反対!』の大シュプレヒコールですよ」
ヒデ「権力の横暴だ」
ゾノ「どうしても癪だったので、左半分はそのまま、右半分だけ丸坊主にして登校しました。名づけて半ベンパツ。これがぼくの革命思想の原点です」
───よくわかりました。それで先ほどおっしゃられていた<髪のお告げ>というのはなんでしょうか?
ゾノ「今からそれをご説明しますね。冗談伯爵というのは音楽を作っているグループだと思われる方がほとんどでしょう」
───はい、わたしもそうです。
ヒデ「それが間違いの元なのです」
───と、言いますと?
ゾノ「ここにおにぎりがあるとします(おなかがグーッと鳴る)」
───おなかが空いているんですか?
ゾノ「いえ、ぜんぜん。まあ、ここにおにぎりがあるとしましょうよ(ふたたびおなかがグーッと鳴る)」
ヒデ「別のもので喩えたら?」
───食べ物以外で。
ゾノ「では、手のひらいっぱいのダイアモンドがあるとしましょう」
───はい。
ゾノ「それをこうやって、ギュッと握っておにぎりにしたとします(やっぱりおなかがグーッと鳴る)」

続く。

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聴くとおなかが空く冗談伯爵の七吋シングル第一弾『bird man / 雨上がり』は絶賛発売中。こちらからご購入いただけます。

Chuichiro Nezumi

Chuichiro Nezumi

東福岡経済大学第三文学部中退。1981年、北海道の地下格闘技興行に潜入取材した『麦と革ベルト』で中央論壇賞を受賞。以降、音楽、風俗、経済、ギャンブルなどさまざまなジャンルへの体当たりルポで日本ペン界にこの人ありと言われている。
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