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 冗談伯爵が生み出した衝撃が”セックス・ピストルズ以来の革命”となったことは、今や誰も否定できない。同時期、クラッシュ、ダムド、ストラングラーズがロンドンから雄叫びを上げ、ニューヨークではパティ・スミス、ラモーンズ、テレヴィジョンが大暴れし、注目を集めていた。
 また彼らのトレードマークである女のように長く伸ばした髪、コールテンのジャケットに無精髭という攻撃的な”冗談ファッション”も若者たちをトリコ仕掛けにし、あっという間に世界を席巻した。
 そんな冗談伯爵が自主制作でのリリース活動を一旦終了し、ヴィヴィド・サウンドと契約をした───というニュースが年明けの音楽業界を震撼させたことは記憶に新しい(一説にはその契約金は数億円とも数十億円とも云われている)。そしてアナログシングル三ヶ月連続リリースという暴挙に出たことで、震えは悪寒に変わり、生まれつきからだの弱いわたしは三日ほど寝込んだ……。
 メディアと距離を置き、インタビューにはめったに答えない彼らがなんの気まぐれか、わたしの申し出を受け入れ、取材に応じてくれた。
 彼らが「冗談ファミリー」と呼ぶ三十数名の仲間たちと形成したコミューン=”ましゅまろ村”に招き入れられ、このレアなインタビューは二月某日に決行された。
 ここで彼らが語ってくれるのはサクセスストーリーだ。けれども、彼らが単にラッキーなだけのシンデレラボーイでは決してないということを裏付ける迫力を冗談伯爵は持っている。幸運にも王子と結婚したシンデレラが、その後も有能な妻であり、美しい姫であり続けたのなら、それはもはや運の力とは言えないのではないだろうか?

インタビュー&構成:鼠忠一郎

KazariLine

───まず、この場所についてお聞きしたい。
前園(以下、猫)「驚いたでしょ? 都心にこんなところがあるなんて」
新井(以下、犬)「これだけアクセスが良くておまけに手付かずの自然が残ってる場所が……って、ここを訪れた人はみんな驚いて絶句しますね」
───はい。でも、たぶんここって誰とは言いませんが、やんごとなき方がお住まいになっているところですよね。勝手に住んだら問題があると思うのですが。
猫(以下、つぶあん)「シャラァップ! そんなしたり顔で常識を語るひとって、ボカァだいキライだなぁ」
犬(以下、こしあん)「いやいや仕方ないよ。ぼくたちみたいな既成概念との闘いってものに、ひとかたならぬ宿命を感じちゃってるゲイジュツ人間と、一介の音楽ライターさんを比べちゃあねえ(笑)」
───あと、みなさんの姿にも驚いたんですが……全裸ですね。
つぶあん(以下、日産)「あたりまえじゃないですか。ぼくたち冗談伯爵がもっとも嫌うこと、それが隠し事です」
こしあん(以下、スバル)「そもそもぼくたち二人が出会ったキッカケからして、全裸がつきものの場所でしたから」
───行きつけのサウナが一緒だったとか?
日産(以下、シーナ)「ブブー。残念。正解はレコード屋です」
───えっ! どうしてレコード屋と全裸が関係あるんですか?!
スバル(以下、ロケッツ)「あれ、鼠さん、ちょっと前、東十条にあった中古レコード屋をごぞんじない? 入店するとき全裸にならないといけなかったんですよ」
シーナ(以下、ハリー)「あまりに万引きが頻発するんで、頭にきた店主がそういうルールにしちゃったんです。店に入るやいなやコインロッカーがあって、そこで服をぜんぶ脱ぐシステムで」
ロケッツ(以下、蘭丸)「良いレコード屋だったよね、あそこ。買ったレコードに変な毛が入ってるのが玉にキズだったけど(笑)」
───もう無くなっちゃったんですか?
ハリー(以下、ポッター)「そうなんですよ。時々そこの常連同士が”レコードスワップ”と称して店で交換会をやってたんですけど、ヘンな意味に勘違いされたのか、たびたび警察に通報されちゃって(苦笑)」
蘭丸(以下、J.K.ローリング)「まあ、ぼくたちはよくそのレコード店で顔を合わせてたんです」
ポッター(以下、リング)「全裸だと心の距離もすぐに近くなりますよ。あとお互いが掘るもので趣味って分かるじゃないですか?」
J.K.ローリング(以下、マツキヨ)「そうそう、掘ったり掘られたりしてるうちにお互いのことがちゃんと分かってくるもんね」
リング(以下、ヤスキヨ)「ああ、ああいう熊っぽい髭面が好きなんだ、とか」
マツキヨ(以下、前園)「バックが良い、とか」
───えーっと、何の話でしたっけ?
ヤスキヨ(以下、新井)「もちろんレコードです!」
前園「で、たまたま二人で同時に店を出たときがあって、どちらからともなく声を掛け合って、喫茶店に同伴しまして」
新井「それで意気投合した、というのが冗談伯爵の始まりですね」

続く。

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Chuichiro Nezumi

Chuichiro Nezumi

東福岡経済大学第三文学部中退。1981年、北海道の地下格闘技興行に潜入取材した『麦と革ベルト』で中央論壇賞を受賞。以降、音楽、風俗、経済、ギャンブルなどさまざまなジャンルへの体当たりルポで日本ペン界にこの人ありと言われている。
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