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堀部篤史×ミズモトアキラ
コテージのビッグ・ウェンズデー
発行:誠光社 / BW PRESS
1,200円+税
全148P / B6版

発売日:11月初旬
*10月28日に開催する恵文社コテージ『コテージのビッグ・ウェンズデー』VOL.20 / 最終回の会場にて先行発売いたします。

京都・恵文社一乗寺店が運営するフリースペース「コテージ」にて、店長(当時)の堀部篤史がホストを務めて、毎月第四水曜に通算20回開催された体験型トークイベント「コテージのビッグ・ウェンズデー」。エディタ−&DJのミズモトアキラをゲストに迎えた京都編、そして出張版である松山篇で繰り広げられたトーク内容をベースに大胆なリミックスを加えたほか、新作コラム三本を書きおろして収録した待望の単行本。収録したテーマは「タモリ」「伊丹十三」「村上春樹」の三本です。テレビも見ねえ、雑誌も読まねえ、ミックステープて何者だ? そんな世代のあなたに捧げる波形のモノリス。オールドメディアとポップカルチャーの復権がこの一冊に!

イラストレーション:青木みらの
装幀:ミズモトアキラ

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あとがき───の、別ヴァージョン。

 コテージのビッグ・ウェンズデーでおしゃべりした内容を文字起こしして、書籍にしようというプランは、イヴェントを始めた初めのほうから、ぼくと堀部くんの共通認識としてあったと思います。
 それゆえ、ぼくたちのトークはほぼすべてが録音され、有能なボランティアスタッフによって文字起こしをしてもらっていました。

 書籍化されるような対談は、出版社が押さえた高級ホテルのスイートだとか、風光明媚な場所にあるコテージなどで、当人たちと担当編集者、あとはカメラマンくらいが立ち会うだけで、ひっそりと行われているのがほとんどです。
 おなじコテージでも、こっちのコテージにはお客さんが目の前にたくさんいますから、話そうと思って準備していた話題を、観客のかたのリアクションによって、引っ込めたことだって何度もあるし、逆にウケ狙いのリップサーヴィスで思ってもみないことを口走ったりすることもしばしばです(主にぼくですが)。
 当然のことですが、今回のトークは驚くほどうまくいったなあと自画自賛する回もあれば、話が思ったように転がらず、「せっかく京都まで来たのに俺は……」とガッカリした回もありました。もちろんそうしたパーソナルな手応えと、お客さんの感想には差異があったでしょうし、そこがまたおもしろいのですが(一致してたらごめんなさい)。
 でも、観客のみなさんがいることで得られるドライヴ感や対話のスリリングさというものは、高級ホテルのスイートじゃ絶対に味わえないものです。だからぼくたちのやりとりを読み物として落としこんでいく作業においては、なるべくその魅力を削がないよう、細心の注意を払ったつもりです。

 堀部くんとはかれこれ15年の付き合いになりますが、このイヴェントのこともあって、最近はこれまで以上に濃い付き合いをしています。初めて会ったときから実際の年齢とはかけ離れた、落ち着きのある青年でしたが、思考や洞察の鋭さには感心させられてきました。彼は人前に出てしゃべるときでも、展開する論理にはきっちりと筋が通っていて迷いがありません。
 その点、ぼくはかなり大雑把でいい加減なものですから、だいたいの入り口は見つけておくけれど、あっちでもないこっちでもないと、荷物を手にぶら下げ、口になにか食べ物が入ったような状態で、出口を求めて(時にはそれすら忘れて)大概どこかをウロウロ歩きまわっているのです。

 ビッグ・ウェンズデーは学校の授業じゃないので、何かを学び取って帰ってもらおうなんて、つゆとも思っていませんでした……少なくとも、ぼくは。
 堀部くんがカッチリやってくれる分だけ、ある程度ぼくにはアドリヴを吹く余裕を彼が与えてくれていました。岩手のジャズ喫茶『ベイシー』の菅原さん(言うまでもなく、ヨルタモリでタモさん扮する”吉原さん”のモデルです)が『SWITCH』で語っていたように、デューク・エリントンのバンドでも向上心があるのはエリントンだけ。あとのメンバーは酒飲んで、ステージ上で寝てたりする。それをエリントンが叩き起こして、目が覚めるまでアップテンポのソロを何コーラスも吹かせる。それでもすごい演奏をするんですね、ジャズな人って。
 要するに、ぼくはそういうことを狙って、あえてそのようにしていたんです。これはもうほんとうに肝の座った男にしかできない、一種の達成であり、偉業なのです。

 イヴェントなら多少話が混乱しても、表情や身ぶり手ぶりなどでなんとかごまかす方法はあります。しかし現場では笑ってゆるしてもらえても、それを本にするともなれば、そのままではなかなか読みにくい本になってしまいます。そうした「移ろい」もまた、書籍化に際して整理してありますので、読者であるみなさんが路頭に迷うことは無いと思います(会話の移ろいをいじらず、そのまま大胆に書籍化したのがほかならぬ伊丹十三さんで、その結晶である『小説より奇なり』という本は、ぼくたちにとってのバイブルであり、指針でもありました)。

 本の出版計画を固めたあと、堀部くんが恵文社を辞めて、自分のお店をはじめることになりました。必然的に彼は超多忙となり、デザインなども含めて、編集作業はより大きな部分をぼくが受け持つことになりました。
 ぼくも堀部くんもいわゆるペーパーバックという仕様で出したいというイメージを共有していたので、そういった印刷に対応してくれる業者探しをしたのですが、これにはなかなか苦労しました。欧米ではごくありふれたフォーマットなのに、日本ではまったくイレギュラーな仕様という扱いで、見かけはとてもチープなのに、いざ作ろうとするとものすごくコストがかかるのです。
 そもそも書籍は自費出版することを決めていたので、予算はあってないようなものでした。いや、そういう書き方をすると「ある」みたいに見えますが、実際にはもちろん「無い」ほうです。ぼくたちがやりたかったことを、かぎられた制作コストのなかでバランスを取ることには、とても腐心させられました。少ない予算で個性的な本を出している小さな出版社の人たちのことをあらためて尊敬しました。

 脚注や図版などについては、いろいろ考えた挙句、ほとんどすべて割愛することにしました。はじめのほうに書きましたが、本書の内容は基本的にトークショーでお話したことがベースになっています。脚注や図版がふんだんに盛り込まれた本はぼくも堀部くんも大好きですが、そういうものをいちいち拾いながら読んでしまうと、対話の持つスピード感というのはどんどん損なわれていってしまいます。
 みなさんにとって気になることがあれば、スマホやタブレットでいつでもどこでも調べることが可能でしょうから。どうしても本書のなかで補足しておきたいことは、個別に脚注を付けず、会話のなかに織り込んでおきました。

 そしてもう一人、この本に関わってくれたすばらしい才能───表紙や挿絵を描いてもらったイラストレーターの青木みらのさんを紹介しなくてはいけません。
 彼女は長崎在住の、来年に受験を控えた18才の現役高校生です。PEANUTS RECORDSの井手くんがお客さんとして店にやってきた彼女(校外授業のついで、だったそうです)と仲良くなって、ショップのロゴを描いてもらった、という経緯を彼のSNSで知っていました。
 今回の本はどうしたってオトコノコのお楽しみといった雰囲気になりそうだったから、ヌケの良い爽やかな彼女の絵のタッチは、絶対、この本には必要だと直感しました。
 勉強が大変な時期に……と、さすがに思いましたが、彼女は快諾してくれ、リクエストに応えて、ほんとうに素敵なイラストを描いてくれてありがたかったです。ただし、この仕事のせいで目指す大学に行けなかった!なんてことのないよう、あとはしっかり勉学に励んでいただきたいと願っています。

 さて、ぼくは全20回行われたコテージのビッグ・ウェンズデーのうち、京都で開催された分のちょうど半数(10回)、そして松山編の3回をあわせた計13回に出演しました。
 タモリ、伊丹十三、村上春樹についての全対話、あと赤塚不二夫、和田誠、懐かしい未来という3つのテーマで3本のコラムを書き下ろし、計6回分の特集をこの本のなかに補完しました。
 ですから、まだ半分くらいのコンテンツは世に出ていないわけです。もっと言えば、他のゲストの方が出演された回だって残っています。まあ普通ならその場かぎりで会場の空気のなかに消えていってしまうものが、こうしていくつかでも残されたというのは意義深いと思っています。

ここに書かれていないすべてのことについては、どうしたらいい? 書いた場合でも、ほんの標(しるし)ばかりだ、このことはどうしたらいいのか。
リチャード・ブローティガン/藤本和子訳『不幸な女』より

 堀部くんが開く新しい書店「誠光社」でも、ビッグ・ウェンズデーの続編となるようなイヴェントが、いずれスタートすることになるでしょう。もちろんそこにぼくが呼んでもらえる保証は、今のところ何も無いですけど(笑)。もしそんな機会があれば、そのときはぜひみなさんとお会いできればうれしいです。
 誠光社の営業が落ち着くまで、堀部くんもなかなか動きが取れないみたいなので、11月あたまから本格的にスタートさせる、書籍の発売記念ツアーには、基本的にぼくひとりで出かけることになっています。
 もちろんまた京都以外の街にもふたりで足を運んで、みなさんの前でおしゃべりすることも徐々に再開させていくつもりです。お誘いはいつでもウェルカムです。ご興味のある方はぜひお声掛けください。

 ということで───。
 さまざまなみなさんの協力のもとにようやく完成した、堀部篤史×ミズモトアキラ『コテージのビッグ・ウェンズデー』を、何卒よろしくお願いします。

カウアイ島のコンドミニアムで白い虹を眺めながら。
ミズモトアキラ

 
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ご予約 / ご購入は誠光社にて。
また各地のイヴェント会場、ほか全国の独立系ブックストア、レコード店、雑貨店などでも随時販売いたします(取扱店に関する情報は後日おしらせします)。

堀部篤史×ミズモトアキラ『コテージのビッグ・ウェンズデー』発売記念トークショーツアーについてはこちらをご覧ください。